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日本において医薬品は、医師の診断に基づき発行された処方箋を元に、薬剤師が処方する医療用医薬品と、薬局などで誰でも自由に買える一般用医薬品に分けられている。前者の場合、医師、薬剤師の判断がなければ、作用より副作用の方が大きくなる可能性があるため、このような制度になっている。

一方、胃薬から覚せい剤に至るまで、ありとあらゆる医薬品が市場で買えてしまうのが北朝鮮だ。「社会主義保健制度」が機能していた時代、薬は病院で処方してもらうものだったが、1980年代の経済、食糧危機で様々な制度が崩壊。社会主義保健制度もその一つだった。

病院で医師の診察を受けても、薬は処方してもらえず、市場に行って購入しなければならない。病院での診察を経ずに、薬を買って飲むことも当たり前のように行われているが、それが悲劇を生んでしまった。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が、以下のように伝えてきた。

(参考記事:医薬品不足が深刻な北朝鮮、政府の対策は「病院で作れ」

甲山(カプサン)郡の邑(中心地)に住む40代女性は今月10日、咳と喉の痛みを感じた。政府が、新型コロナウイルスの感染者発生を公式に認める2日前のことだ。薬を買うカネがなかった彼女は、薬なしに耐えるしかなかった。

社会主義保健制度が機能していれば、何の心配もなく、病院で診察を受け薬も処方してもらえただろうが、結局彼女は20日になって、市場の医薬品業者から、秋の収穫後に穀物で代金を支払うと「ツケ」にしてもらい、ペニシリン2本を購入した。情報筋は、その価格に言及していないが、相当高価なものだっただろう。

(参考記事:コロナ急増の北朝鮮で医薬品価格が3倍に…品薄も深刻

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ちなみに、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は14日、「発熱患者の治療をいかにすべきか」という見出しの記事で、抗ウイルス剤のインターフェロンアルファー2b、セフトリアキソンや、解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン、イブプロフェンなどと共に、ペニシリンの使い方を紹介している。

粘り気のある痰が出て、白血球の増加など2次的な感染所見が現れれば、ペニシリン200万単位(子どもの場合は体重1キロあたり5万〜10万単位)を1日3回に分けて、筋肉注射したり、アモキシシリンまたはエリスロマイシンを1回に0.5グラムずつ、1日3回服用する。

細菌感染のひどい場合には、ペニシリン300万〜500万単位(子どもの場合は体重1キロあたり20万〜25万単位)を1日3回に分けて駐車したり、セフトリアキソンを1回に2グラムずつ1日2回、またはレボフロキサシンを1回に0.5グラムずつ、1日2回静脈注射する。

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医療関係者が読むような専門的な記事が、一般の新聞に掲載されているのは、患者自らが医薬品を購入して投与する北朝鮮の現実の反映と見ていいだろう。

さて、件の女性だが、ペニシリン2本を注射した後、わずか50分で息を引き取ったという。死因がオーバードーズ(決められた量を超えた使用)のせいだったのか、通常ありえる副作用のせいだったのか、或いは、栄養失調気味で薬に耐えられなかったのか、詳細はわかっていない。

また、彼女が使用したのが、北朝鮮で広く流通している、ニセ薬、インチキ薬だった可能性も考えられる。

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(参考記事:北朝鮮にはびこるインチキ商品、政府の対策もインチキ

情報筋は、今回の死亡について「国のお粗末な医療体制のせい」とし、「国の医療体制がきちんと働いていたら、こんなに虚しく命を落とすことはなかっただろう」と指摘。今回のコロナ感染拡大で、北朝鮮の医療体制がいかにダメかを改めて白日の下に晒したと、批判した。