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今月10日、韓国で尹錫悦(ユン・ソギョル)新大統領が就任した。就任演説では、北朝鮮が核を放棄すれば、経済と住民の生活の質を画期的に改善できる計画を準備すると述べ、感染が拡大している新型コロナウイルスについても、ワクチン支援の用意があると述べている。

一方の北朝鮮は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙・朝鮮新報や対韓国宣伝サイトを除き、尹大統領就任について全く報じていない。つまり、北朝鮮の一般国民は、このことを知らされていないのだ。ただ、情報は口コミで広がっている模様だ。

今回デイリーNKは、尹大統領就任について、首都・平壌の中堅幹部Aさん、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の下級幹部Bさん、両江道(リャンガンド)の一般住民Cさんの3人とのインタビューを行った。

Aさん、Bさんとも「核放棄はありえない」と答えたのに対して、Cさんは非核化議論そのものについて疑問を呈し、まずは食糧や医薬品を支援してほしいと述べた。

ー韓国の新大統領が就任したが、ニュースを聞いてまずどんなことを思った?

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平壌の中堅幹部(以下A):幹部の間では、尹錫悦という人の学歴や経歴が噂になっていた。平凡な人が大統領になったのだが、国がうまく回るのだろうかと思った。

咸鏡北道の下級幹部(以下B):南朝鮮(韓国)ではある程度、人民の人気を得られれば、誰であろうが大統領になれるのだなと、まず最初に思った。選挙で選ばれれば誰だって大統領になれることについて、本当に驚きだった。(幹部登用には)出身成分(身分)が問われるここ(北朝鮮)とは異なり、先祖が誰であろうとも大統領になれる南朝鮮が羨ましい。さらには、自らの手で大統領を直接選べるところに住んでいる人民が本当に羨ましい。

(参考記事:「コチェビから韓国の国会議員に」北朝鮮から驚きの声

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両江道の一般住民(以下C):わが国(北朝鮮)にとっては良いことではなく、否定的な関係の保守側の党から(大統領が)出たことに、あまり関心がわかなかった。ただし、代議員(国会議員)でもない人が(大統領に)なったというところが、今までの南朝鮮の大統-とは比較されると思う。

ー尹大統領の人柄は知っているか?どう思うか?

A:中央検察所長(検事総長)の職にあった人で、検察の出だと聞いている。法律のこと以外はわからない人に大統領が務まるのか、奇妙だ、理解できないとの反応が出ている。

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B:そもそも大統領選挙に出馬する考えはなかったのに、文在寅(前大統領)に疎まれて、職場から追い出され、常識と正義の通じる社会を作るとして、出馬した人だと聞いている。しかし、権力を握ればどうなるか、誰にもわからない。今後を見守りたい。

C:わが国と関係の悪い保守側の人であること、一般幹部だったのが大統領選挙に出たということくらいしか知らない。

ー尹大統領は当選前、「北朝鮮に対して原則に基づいて断固として対処しつつも、対話の扉は開いておく」と述べていたが、今後の南北関係の展望は?

A:わが国の自衛的国防力強化にいちゃもんをつける一方で、米国と協力して高価な装備を導入し、合同軍事演習もいとわない南朝鮮の原則とはいかなるものなのか。家長が家を守るために、鍵や防犯装置をしっかりしたものにするのと同様に、国も国防、軍事を強くしなければならないではないか。自分たちのやっていることは問題にならず、わが国が国防力を強化すると問題だという認識そのものが、われわれと距離がある。対話の扉を開閉するのは、主導権を握っている方だ。その扉は、われわれが開きたければ開くだろう。

B:当然、文在寅とは異なる政策を行うだろう。しかし、われわれが核実験を行い、ミサイルを撃って朝鮮半島を緊張に追い込めば、何かしら、してくれようとするのではないか。それならば、前政権と変わらない。今後、北南関係は、薄氷を踏むような状態となるだろうが、結局は現政権も前政権も同じで、これといった特別な策は出せないだろう。

C:金大中、盧武鉉、文在寅の党は、われわれを少しでも助けて、すべてのことを対話で解決しようとしたが、尹錫悦の党は、われわれとの敵対関係を強く押し出す側なので、北南関係は後退するのではないかと思う。

ー尹大統領は就任演説で、核開発を中断すれば、国際社会と強力として北朝鮮の暮らしを画期的に改善する準備があると述べた。

A:核を手放せば、ウクライナのようになるのではないか。核とコメを交換するのは、強国の隊列からわれわれを追い出し、永遠に経済属国になれと言うのと同じだ。核を捨てなくても、経済協力がうまくできる北南政策を出すべきだ。

B:わが国は核を絶対に手放さない。核兵器だけが唯一の希望なのに、それを手放せだなんて、話にもならないことをなぜ言うのか全くわからない。結局、尹錫悦もどうすべきか深く考えていなかったということで、われわれのことをあまりにも知らないようだ。(北朝鮮という)国が、住民の生活の質に神経を使うとでも思っているのか。むしろ首領(金正恩総書記)の命をどうやって保証してやるかを考えるべきだろう。

C:今、コロナで民心は戦々恐々としていて、皆がブルブル震えている。核は二の次、三の次で、まずは薬、食糧、支援物資を送ってほしい。核開発中断やら非核化やらは、人を生かしてからすればよい話だ。大胆な計画で、まずは薬と食糧を送ってくれれば、われわれ地方住民にとって、南朝鮮は恩人になる。

(参考記事:「6月までが危ない」コロナと飢餓で金正恩政権に最大の危機

ー南北関係の核心は核問題だ。核を守り抜くべき?それとも放棄して関係改善に乗り出すべき?

A:核は、代々受け継がれる万能の宝剣だ。(それが得られたのは)核保有国の頂上に上り詰める道ににじんだ人民と血と汗のおかげだ。あまりにも多くの代償を払ったのに、今さら過去に戻れようか。

B:党と首領は核を絶対に放棄しない。放棄させようと努力することそのものが愚かしいと、ハッキリ知ったほうがいいだろう。それなのに、核を放棄すれば経済、住民の生活をどうにかしてやるとは…そんなことは言わないほうがまだマシだ。

C:核を手放しても、人々が暮らしていけるようにできればいい。核を完成させたと言っているが、国防にカネをつぎ込み続けているではないか。発展した外国と軍備競争をするのではなく、国防費の1%だけでも回せば、人民の食べる問題は解決できるのではないか。

ー尹大統領は、文前大統領のように、金正恩氏と信頼関係を築ける?

A:信頼とは文字通り信じることだ。あの党(韓国与党の国民の力)とわれわれとの間には信頼がなかった。名分も弱い。多くの人が心配している。

B:こちらでは、文前大統領と信頼を築けたと見ていない。文在寅を利用しようと様々な待遇をしてやったのに、むしろ米国にやられたと(金正恩氏が)怒ったと聞いた。ベトナムに行って、やられて帰ってきて、どれほど多くの人の首が飛ばされたか知っているのか。南朝鮮の大統領は、常に米国に忠実な犬、自分の思い通りに何もできない操り人形に過ぎないと、こちらの幹部たちは考えている。

C:よくわからない。ただ、人の命がかかっているので、援助で信頼を築けばいいのではないか。食べ物と薬に何の思想があるのか。資本主義への幻想を抱くからと南朝鮮のものはダメだと強調しても、人々は首を傾げるだけだ。このような時に南朝鮮の大統領が大胆に援助物資で助けてくれるのならば、感謝すればよいと思う。

ー首脳間の信頼関係は重要?

A:そう思う。信頼できない党の大統領だからだ。信頼がなく、本心が見えない人は、隣人であっても話をしないものだ。

B:首脳間の信頼関係構築は大切だと思う。その理由はただ一つ。戦争だけは防げるから。

C:そう思う。(韓国は)大統領が頻繁に変わるから、まずは善意を見せるべきだ。

ー北朝鮮国民として、韓国の大統領に期待することは?

A:国際社会の舞台で、同族どうしで罵ったというニュースが新聞に載らないように、悪口は控えて、少なくとも同族間の戦争はしないでほしい。最悪の状況にならないでほしい。

B:今回の就任演説で、自由という言葉を最も多く使ったというが、今の南朝鮮ほどの自由をこちらにも分けてほしい。もう一つは、北朝鮮で最も深刻な電力問題を解決してくれるとか、(鉄道の)レールを敷き変えてくれるとか、そのような問題で、何をしてくれるのかを交渉してほしい。

C:全世界で、1日3食をまともに食べれないのは、わが国しかないだろう。1日たりとも満腹になる日がないまま暮らすわれわれに、薬とコメを援助して、必要なものを送ってほしい。