北朝鮮の金正恩総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は4日、「南朝鮮(韓国)は主敵ではない」としながらも、韓国側が軍事的対決を選択した場合には核兵器の使用をためらわないとする談話を出した。
韓国では徐旭(ソ・ウク)国防相が1日、陸軍ミサイル戦略司令部の改編式の席上、「(北朝鮮の)ミサイル発射兆候が明確である場合は発射点と指揮・支援施設を打撃できる」と発言。金与正氏はこれを「先制攻撃」に言及したものとみなし、2日付の談話で「狂っている」などとして激しく反発。今回の談話は、それに続くものだ。
しかし今回の談話をよく読むと、韓国だけでなく日本政府もまた、その内容を注視すべきであるように思える。
(参考記事:「誰かを先に攻撃しないが、戦争になれば核を使用」北朝鮮の金与正氏が談話)たとえば金与正氏は、今回の談話で次のように言っている。
「誰かがわれわれに手出ししないなら、われわれは決して誰かを先に攻撃しない」(朝鮮中央通信の日本語版より。以下同)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面敢えて「南朝鮮」とせず「誰か」としたのは、米国や敵基地攻撃能力を模索する日本も念頭に置いた可能性がある。
「しかし、南朝鮮がいかなる理由であれ、かりに誤判によってであれ、徐旭が言及した『先制打撃』のような軍事行動に出るなら、状況は変わってしまう」
韓国の徐旭国防相が言ったのは、「(北朝鮮の)ミサイル発射兆候が明確である場合は発射点と指揮・支援施設を打撃できる」ということだった。北の核ミサイルが自国に向かって発射された後に迎撃するだけではリスクが高いから、危ないと判断した場合は先に発射拠点などを先に叩く、という趣旨だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面日本が最終的に敵基地攻撃能力を備えることになるのか、そうなるとして、どのように運用されるかは未知数だ。しかしいずれにせよ、徐氏が語ったのと同様の運用方式も視野に入るだろう。問題は、いくら「発射兆候が明確」だと判断されても、100%確実ではないということだ。そして、自国に対する「先制打撃」がたとえ「誤認」によるものだとしても、必ず核で報復する、と金与正氏は言っているわけだ。
つまり、北朝鮮のミサイル発射拠点を「先制打撃」する能力を持ち、運用する国は、自らの「誤認」によって核攻撃を誘発するリスクを負っているんですよ、と金与正氏は脅しているのだろう。
しかも同氏は「戦争の初期に主導権を握り、他方の戦争意志を焼却し、長期戦を防ぎ、自己の軍事力を保存するために核戦闘武力が動員される」とすることで、敵からの「先制打撃」に対して即座に核の報復を行うことを強調している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面日本の敵基地攻撃能力の獲得が現実化したとき、北朝鮮は同じような脅しを、日本に対してもかけてくる可能性がある。
そして、ここで想起すべきは、金与正氏の前歴だ。同氏は2020年、脱北者団体のビラ散布問題で南北関係が緊張した際、南北共同連絡事務所の爆破を主導した。
(参考記事:【写真】水着美女の「衝撃写真」も…金正恩氏を悩ませた対北ビラの効き目)
金与正氏は軍のポストには就いていないものの、最高指導者の妹としての影響力には、やはり注目すべきものがある。