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北朝鮮で、毎年3月2日は「植樹節」だ。1946年のこの日に、金日成主席が、金正淑(キム・ジョンスク)夫人とまだ幼子だった金正日総書記を連れて平壌の牡丹峰(モランボン)に登り、「山と野に木を植えることについて」という指示を出したことに由来する。当時、朝鮮の山々は、日本の戦争遂行に必要な木材などを調達するためにハゲ山となっていた。

今年の植樹節に合わせて、3月第1週と2週が「木を植える週間」に定められ、大々的な植樹運動が繰り広げられていると、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

当局は、各組織に対してあらかじめ苗木を準備して、3月1日から2週間にわたって本格的に植林を行うように指示した。同時に、新型コロナウイルスの感染者が発生しないように、植林に際しても防疫規則を徹底的に守り、違反行為を監視するようにも指示した。さらには、山に入る際にはライターやマッチを持参しないよう呼びかけた。

ちなみに、元々雨が少なく強風の吹くこの時期には、朝鮮半島各地で山火事が頻発する。韓国・慶尚北道(キョンサンブクト)の蔚珍(ウルチン)で今月5日に発生した山火事は、5日間にわたって燃え続け、約1万9000ヘクタールの山林などが被害を受けた。

さて、北朝鮮で植林事業に参加するにあたっては、苗木を山林経営所から購入しなければならない。情報筋の説明では、コネのある人はタバコ1〜2箱、コネのない人はそれ以上の額で購入しなければならない。おそらく山林経営所にとって、植樹節は数少ない「儲け時」なのだろう。

(参考記事:北朝鮮「植樹戦闘」用の苗木、安値で中国に輸出される

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金正恩総書記の提唱で始まった植樹運動は、国民の生活に影響を与えている。山奥には、人々が山を切り開いて作った「トゥエギバッ(個人耕作地)」が数多く存在するが、国は畑を潰して木を植えろというのだ。

「国が配給をくれないので、自活のため汗水たらして切り開いた土地に、国が木を植えろというから不満が大きい。住民と山林監督員の間で小競り合いになることもしばしばだ。力のない一般住民は土地を奪われまいと頑張るものの、結局は木が植えられてしまう」(情報筋)

(参考記事:国家にスイカ畑をむちゃくちゃにされた北朝鮮農民の怒り

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かなり強引なやり方の植林ではあるが、徐々に効果が出始めている。

デイリーNKが、米地質調査局の衛星MODISが撮影した衛星写真のうち、2001年から20年分を分析した結果、北朝鮮の山林は、2001年から2014年まで年平均で0.8%減少していたが、2015年を境に0.5%の増加に転じたというのだ。

国民からのサボタージュにあっている北朝鮮の植林事業だが、全く意味がないというわけではないようだ。

(参考記事:植えたそばから引っこ抜く…北朝鮮のお寒い植林事業