北朝鮮で「占い」は、刑法256条(迷信行為罪)により禁止されている。当局はしばしば取り締まりを行い、占い師を処刑するなどの弾圧を加えているが、社会が不安定で情報が少なく、未来が見通せない国情の下、占いの需要は一向に減ることはない。
(参考記事:「公開処刑」でも止められない北朝鮮国民の占い中毒)北朝鮮北部、中国との国境に接した両江道(リャンガンド)では、占いがブームとなっているが、その様相は今までと若干異なる。詳細を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
現地では、韓国や中国に住む家族からの送金を、北朝鮮に残る家族に届ける「送金ブローカー」が数多く活動している。彼らは最近、仕事を請け負うにあたって、送金する人と受け取る人の生年月日を尋ねることが多いという。そればかりか、脱北者家族の場合は、父母きょうだいの生年月日を尋ねることもあるとのことだ。
ブローカーはそれを持って占い師を訪ね、送金を請け負っても安全かどうかを占ってもらうというのだ。
この地域では、中国キャリアの携帯電話の使用に対する取り締まりが、長期間にわたって続いている。運悪く捕まり、拷問を受けた末に亡くなる人もいる。かつてなら、地元の保衛部(秘密警察)にいくばくかのワイロを掴ませておくことで、問題なく商売ができた。しかし中央から連合指揮部(取り締まり班)が乗り込んできたことで、それも通用しなくなった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そんな状況で商売をするのは命がけだ。だから占い師を頼るのだという。もちろん、占いの結果次第では、取り引きを断ることもある。
(参考記事:金正恩の処刑部隊が持ち出した「太さ7センチ」の残虐行為)
ブローカーが自分の身を守るために見てもらう占いだが、それが商売に悪影響を与えることもある。生年月日を聞き出そうとすることで、保衛部のスパイではないかと怪しまれ、長年の顧客に逃げられることがあるのだという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国在住の複数の脱北者は、デイリーNK編集部の取材に対して、「生年月日などを根掘り葉掘り聞かれて呆れた」と述べた。
しかし、ブローカーの立場としては、命を守るために、多少の損は致し方ないと考えているようだ。
「どれほど取り締まりがひどければ、当たるか当たらぬかわからないのにカネを払ってまでこんなこと(占い)をやるのか」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方で、脱北者とその家族の立場としても、個人情報は命に繋がることから、当面はこのような状況が続きそうだ。保衛員(秘密警察)の取り締まり手法は日々巧妙になり、情報員(スパイ)も至る所にいることから、どこから情報が漏れて命取りになるかもわからない。
占い師のもとを訪ねているのは、送金ブローカーだけではない。違法な商売に手を出している幹部の中には、占い師を最高尊厳(金正恩総書記)以上に信奉する者もいるそうだ。
(参考記事:北朝鮮「占いとの全面戦争」を宣言)