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世界中どの社会でも存在する「占い」。星座占い、四柱推命、タロット占いなど、その種類は枚挙にいとまがないが、一部の国では禁止されている。

ひとつ例を挙げると、サウジアラビアの宗教警察は2008年、衛星放送で予言番組を行っていたレバノン人男性を、聖地メッカ巡礼でサウジアラビアを訪れた際に「魔法使用」の容疑で逮捕し、死刑判決を下した。2010年に斬首刑が予定されていたが、国際社会の圧力で取り消され、2012年に釈放された。同国では占いで逮捕される人が後を絶たないという。

サウジアラビアの場合は宗教的な理由から占いを禁じているが、北朝鮮は「社会を乱す迷信行為」だとして禁止している。当局は最近、占いに対する掃討作戦の開始を宣言したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、先月末に社会安全省(警察庁)が迷信行為を徹底的に根絶することについての群衆政治事業資料を下し、各地域の安全員(警察官)が管轄区域の工場、企業所、機関の職員、人民班(町内会)の住民を対象に政治事業(思想教育)を一斉に行ったと伝えた。

迷信根絶のための思想教育は朝鮮労働党の方針に従って社会安全省が行っているもので、金品を授受して占い、四柱推命、厄払い、手相、結婚相手の相性を見るなどの迷信行為を絶対にするなと、住民に教育するものだ。

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中でもターゲットになっているのは占い師の主顧客と思われる家頭女性(専業主婦)で、思想教育には全員参加させよとの指示が、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)から何度も下されている。専業主婦と言ってもその多くが市場で商売をしている人たちで、何らかの組織に属している人に比べて、思想教育を受ける機会が少ない。「そのせいで占いにハマっている」と当局は見て、政治事業でその実例を挙げているとのことだ。

市場と家頭女性は、当局にとって好ましからぬ情報、行為が広がる源泉となっており、当局は対応に苦慮しているようだ。

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社会安全省は「迷信を信じる行為は、敵の前に屈服するのも同然」との理屈で、占いの蔓延は社会主義体制を脅かす反社会主義行為だと強調、強力な掃討作戦を行うと警告した。

咸鏡北道の別の情報筋によると、穏城(オンソン)郡では安全部(警察署)が住民を集めて思想教育を行い、1回目に参加できなかった人を全員集めて、改めて教育を行っている。

コロナ鎖国下で生活苦が深刻化する一方の北朝鮮で、占いにハマる人は多いようで、当局は常習的な迷信行為に対しては5年以下、程度がひどい場合には5年以上10年以上の労働教化刑(懲役刑)に処すという刑法256条(迷信行為罪)の規定を挙げて、警告している。

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安全部は、占いにハマった人たちは思想精神的に変質、堕落した者で、見つけたらすぐに通報して、人民の厳しい裁きを受けさせよと主張している。その一方で、以前占いをやったことのある人でも、刑事責任を問わないので自首せよとの呼びかけも行っている。そんな呼びかけを真に受ける人はいないだろうが。

占い掃討作戦の背景について情報筋は、「コメなど食糧、生活必需品の値段が高騰し、生活苦に喘ぐ人々が希望を失って占いに頼り、厄払いをする人が大きく増加している」ことを挙げた。

迷信行為の範疇には宗教も含まれるが、こちらに対する弾圧は非常に厳しく、昨年3月には、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の新浦(シンポ)で、お守りの一種として聖書を所持していただけの女性が、処刑されている。

一方、同じ迷信行為であっても、占いに対する取り締まりは比較的に緩やかなものだった。情報流通が極度に制限され、未来が見通せない状況が続く中で、占い師詣でをする人の中に、幹部も少なくなかったことが影響しているだろう。

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しかし、中には社会の破滅、体制の崩壊を予言する占い師もおり、反社会主義、非社会主義行為(風紀の乱れ)の取り締まりが強化されるにつれ、占いに対する風当たりも強くなった。2019年春には咸鏡北道の清津(チョンジン)で、占いを行った容疑で2人が公開処刑されている。

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取り締まりを強化しても、社会の不安度が増すほど占いに頼る人が増加する傾向は止まず、当局は大々的な思想教育に乗り出したわけだ。しかし口コミで情報がやり取りされ、民家で密かに行われる占いの特性上、根絶は非常に困難だろう。いや、当局が反社会主義、非社会主義だと言って取り締まる他の行為も、生活や人々の楽しみに直結したものが多く、取り締まりは永遠に終わらないイタチごっこと言えるかもしれない。