北朝鮮国営の朝鮮中央通信は2020年7月、このような記事を配信している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金野郡自流式水路を建設
【平壌7月7日発朝鮮中央通信】咸鏡南道で100余里(朝鮮の10里は日本の1里に相当)の金野郡自流式水路を建設した。
同水路が建設されて郡内の数千ヘクタールに及ぶ田畑に水を円滑に送って農業生産に大きく寄与できるようになった。
道内の活動家と道民の献身的努力によって、土の削り取りと盛り土の量だけでもほぼ100万立方メートルに及ぶ膨大な自流式水路の建設が6カ月余りの間に終わった。---
この水路だが、完成後の検閲(検査)で不合格判定を受けてしまった。
咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると先月末、内閣と咸鏡南道人民委員会(道庁)は金野(クミャ)郡の協同農場経営委員会が施工したこの水路について施工検閲を行った。
係官は、水路の両端の石垣は足でつっついただけで崩れ落ちるほどもろく、モルタルを塗った部分がパサパサしており、壁面の色がバラバラであるのを見て、完全に手抜き工事だと指摘した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面水路の工事には、金野郡の労働鍛練隊(軽犯罪者を収容する刑務所)の受刑者の男性50人、女性28人が動員されたが、あまりの出来の悪さに激怒した朝鮮労働党咸鏡南道委員会は、咸鏡南道安全局(県警本部)に、労働鍛練隊のイルクン(幹部)と労働鍛練生(受刑者)に対する調査を行うよう指示した。
(参考記事:山に消えた女囚…北朝鮮「陸の孤島」で起きた鬼畜行為)
道安全局は正月早々、金野郡安全部、労働鍛練隊の隊長など関連するイルクンを全員出席させた上で、工事に動員された労働鍛練生に対する思想闘争会議(吊し上げ)を開いた。手抜き工事であることを直接突きつけるために、現場に連れて行ってどこか問題かを見せた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面道安全局は、治山治水は党の方針で、工事は自らの更正の機会であったのに、むしろ国から支給された資材を浪費して、党に「ご心配」をかけたとして、許されざる行為だと指摘、工事を指示したイルクンよりは、実際に工事を行った労働鍛練生を集中的に叱責した。
上役からの叱責を受けた労働鍛練隊の隊長は、思想闘争会議が終わった後、労働鍛練生の食事をトウモロコシ飯1杯から1匙に減らし、リュックを背負わせ走らせるなどの八つ当たりとも言うべき懲罰を行った。
男性1人、女性2人が倒れて病院送りになってようやく懲罰は終わった。鍛練生は恐ろしくて反論も抗議もできずにいるが、「いつまでこんな罰を受けなければならないのか」とひそひそと不満を口にしたという。
手抜き工事の原因について情報筋は言及していないが、考えられるのは、北朝鮮を代表する病弊とも言える「速度戦」だ。政治的に重要な日までに完成させることを重要視して、ともかく速く作ることを指すが、質が度外視され、手抜き工事の原因となっている。その結果、多くの人命が失われた。
(参考記事:一度に500人犠牲も…殺人的「速度戦」を金正恩氏が止めた理由)また、サボタージュも原因として考えられる。コロナ鎖国下に置かれた北朝鮮国民の多くが食糧不足に苦しめられているが、拘禁施設の収監者に対してはそれ以前からひどい飢餓状態に置かれてきた。
そんな状態で力を入れて働こうものなら、栄養失調にかかって命取りになりかねない。適当に手を抜いて楽をすることが生き抜く術だが、それが今回運悪くバレてしまい、問題化したということなのかもしれない。
(参考記事:北朝鮮の金正恩体制が「崩壊の時」に近づいている)