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最高指導者の生誕日が「民族最大の名節」として大々的に祝われる北朝鮮。一方で、最高指導者の命日は、哀悼の気持ちを持ち歌舞音曲を控えるなどの行動が求められる。

さて、毎年12月17日は、金正日総書記の命日だが、これを口実にして、イナゴ商人(露天商)に対する大々的な取り締まりが行われていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

朝鮮労働党清津(チョンジン)市委員会は、金正日氏逝去10年を迎え、今月1日から市場周辺の路上や、その他の路地で露店を開いているイナゴ商人に対して、安全部(警察署)が責任を持って積極的に取り締まるように指示を下した。

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その理由として党委員会は、荘厳で静粛な雰囲気を作らなければならず、資本主義的無秩序を克服しなければならないという点を挙げ、市内の人民班(町内会)、機関、企業所を通じて市民に通告した。

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指示を受けた安全部と取り締まり班は、市内の各市場周辺を急襲、路上で果物、野菜などを売っている商人から品物を取り上げたり、ひっくり返したりするなど暴力的な排除を行い、中には運悪く連行されてしまった人もいる。これでは「荘厳で静粛な雰囲気」とは程遠い。

財政難に苦しむ北朝鮮の地方政府は、以前からイナゴ商人に対する取り締まりを行っている。地方財政は、市場で商売する商人が納める市場管理費(ショバ代)がその多くを支えているが、市場でなく露店で商売をされると取りっぱぐれになるからだ。一方のイナゴ商人は、市場管理費を支払えるほどの売上げがないから、路上で店を開いているのだ。

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生きるのに必死なだけなのに、取り締まり班は「市場の中で商売せよというのが政府の政策なのに、政策通りにしない者は罪人だ」「党がするなということをするのは反党的行為を犯した反動」などと言い放ち、生活支援も行わず無慈悲に追い払うだけの当局。

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そればかりか、「いくら苦しくとも将軍様(金正日氏)逝去10年を迎え、12月いっぱいは自重せよ」「今年は将軍様が亡くなってから10年なので、真心で涙を流して、亡くなったときを思い起こして正しく生きよ」との指示を下す始末。

当局の心無い言葉は止まらない。

「将軍様が亡くなった月なのに、儲けようとしている者どもは餓死しても構わない」
「資本主義の産物であるイナゴ商人取り締まりに不満を示すのは思想的に問題がある」
「思想が不穏な者どもは、家族全員が餓死しようともこの国に暮らす資格はない」

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これが、人間中心のチュチェ(主体)思想を掲げつつも、国民の生命を大切にしない北朝鮮という国の姿だ。

当然のことながら、暴言とも言うべき当局の言動は、住民の怒りの火に油を注いでいる。

「どれだけ苦しければ、この寒空に震えつつ外で商売をしようと思うのか」
「ショバ代を払うカネさえあれば、このザマでいようか」

また、没収された品物は、借金をして仕入れたものなので返してほしいと泣きつく人もいる。

そんな状況に情報筋は、「将軍様が亡くなった月という政治的宣伝は、腹をすかせた人には効果がない」「住民たちは、今は住民生活を安定させるべき時期、秋に収穫した食糧を配給すべきと語っている」と、現地の状況を伝えている。

食糧難の深刻さを知った金正恩総書記は今年7月、軍用の食糧である軍糧米を放出し、人民に配給するよう特別命令書を出したと伝えられている。

(参考記事:北朝鮮、超貧困の「絶糧世帯」に軍用食糧を配給