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嘆願事業。国家経済発展5カ年計画の達成に欠かせないが、労働力の足りていない農村、炭鉱などに都市部の若者が嘆願して向かうというもので、国営メディアは「若者たちが次々に嘆願している」と宣伝している。

だが、嘆願とは言葉ばかりで、実際は半強制、地域ごとに人員の割り当てすらある。それでも順調に進んでいない状況を、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

朝鮮労働党と青年同盟(社会主義愛国青年同盟)は若者たちに、農村や炭鉱行きを嘆願するようにプレッシャーをかけている。勤め先の党幹部や青年同盟のイルクン(幹部)から呼び出されるだけでも、露骨に嫌な顔をしている。

彼らの多くは、17〜8歳に軍に入り、長期間の兵役を終えてようやく故郷に戻り、家族とも暮らしを取り戻したばかりだ。それなのに、また農村や炭鉱に行けと強いられるのだから、不満に感じるのは当たり前だろう。

それでも、圧力に抗しきれずにとりあえずは農村や炭鉱に向かうのだが、手段を選ばず戻ってきたり、逃げ出したりする方法を考えている。病気になったと嘘をついて、戻ってくる者もいるそうだ。

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都市戸籍と農村戸籍が厳密に分けられている北朝鮮では、農村や炭鉱に移り住めば、戸籍が後者に切り替えられてしまう。豊かな都会に戻ることなく、一生を貧しい僻地で送らなければならなくなるため、なんとしてでも逃げ出そうとするのだ。

(参考記事:各地でトラブル続発、北朝鮮の農村「嘆願」事業

上述の通り、北朝鮮当局は各地域に「嘆願」する人数を割り当てているが、数合わせばかりに必死になり、派遣先での生活、労働の条件を整えることはあまり考えていない。送り込まれた彼らは家をもらえるどころか、日々の糧にも事欠く有様だと情報筋は説明した。怪我などして働けなくなったとなっても、国からの補償は見込めない。

(参考記事:「餓死を免れるため」命がけで外出する北朝鮮の障害者たち

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ある若者は情報筋に「祖父や父の世代は自分のことより祖国と民族のことをまず考えてすべてを捧げたが、われわれは未だに貧しい暮らしをしている。自分が貧しく辛いところに青春を捧げたとしても、豊かな暮らしができるようになるか疑問を抱いている」と嘆いた。

嘆願を強いられた末の悲劇も各地で起きている。その一方で派遣先でトラブルを起こし厄介者扱いにされているケースもある。

そもそも、農村や炭鉱で労働力が足りないのは、働けど働けど貧しい暮らしから抜け出せない現状に絶望して逃げ出す人が増え、安全装備のないままに働いて労災事故に遭い、働けなくなった人が多いからに他ならない。「人と暮らしを大切にする」という基本中の基本ができていない現状で、いくら人を送り込んだところで、何も状況は変わらないだろう。

(参考記事:「農村行きは嫌」挙式直前に婚約者に逃げられた北朝鮮青年