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北朝鮮は今年、19年ぶりに「トンピョ」を復活させた。外貨兌換券と訳されるトンピョは、外貨と両替すると北朝鮮ウォン紙幣の代わりに渡されるものだ。

国内で流通する外貨を国庫に吸収するのが目的だと見られているが、実際の発行の意図、目的などは明らかにされていない。一部では、コロナ鎖国によるインク不足による臨時紙幣との見方も示されている。

(参考記事:北朝鮮が一度失敗した「外貨兌換券」制度復活へ

発行から2ヶ月経ったが、北朝鮮国民の大部分がトンピョの存在すら認識できていない。デイリーNKの複数の内部情報筋によると、一部の幹部と大量の外貨を所有している闇両替商を含めたトンジュ(金主、新興富裕層)くらいしか、その存在を認識しておらず、「話を聞いたことはあるが実物は見たことがない」というトンジュも少なくない。

トンピョの実態を確認できる当局の公式発表、措置、案内文書などもなく、北朝鮮国内でもトンピョに関する噂が飛び交っている。

デイリーNKでは、トンピョの発行目的、関連措置、発行状況について知るために、実際の状況を知る立場にある、財政担当の幹部Aさんとのインタビューを行った。以下、インタビュー全文だ。

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ーー当局がトンピョを発行後、関連の公式発表はあったか?

ない。今のところ、実際に外貨を使う人々にトンピョに両替させて「このトンピョは現金と同じものだ」ということを言っているだけだ。今すぐ外貨を使って商品を買おうとする人に、トンピョも現金と同じ価値を持つということだけ知らせている。以前にトンピョを発行したときは、銀行や国指定の両替所、外貨商店などでトンピョの使い方について案内文が張り出された。実際、新たな政策が始まれば案内が下されるのが一般的だが、トンピョに関しては今のところ文書は出ていない。

ーートンピョ発行の目的が単純に国が外貨を吸収するためのものならば、新たな貨幣を発行する必要はあるのか?

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外貨を持っているのは幹部ではなくトンジュだ。彼らの投資を誘致する方法は何度も試みられた。しかし、誰が自主的に国にカネを献納するだろうか。優待措置があっても外貨を出そうとはしない。しかし、外貨を使うときに、トンピョが外貨の代わりになるのならば、商店や市場でトンピョを流通させることで、外貨が国庫に入るだろうという判断をしたのだ。個人の有休資金を引き出して、国家経済資金として使うための一種のカンパニア(キャンペーン)事業だ。

ーーカンパニア事業ならば臨時的な措置という意味か?トンピョ発行の法的規定はない?

今のところはそうだ。国家計画経済委員会と朝鮮中央銀行が外貨を吸収するために臨時の措置として打ち出したもので、(最高人民会議)常任委員会で法として成立したわけではない。国家経済発展5カ年計画の残りの4年間、国が最大限の成果を出すために必要な資金を一時的に集めて使おうという目的に過ぎず、(それ以降も)トンピョを使い続けるというのではない。臨時的で特殊な措置だと理解すればいい。

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ーー北朝鮮が貨幣を印刷する用紙とインクがなくて、貨幣の代わりにトンピョを発行したという話もある。

そのような理由からではない。いくらカネがなくとも、(北)朝鮮は核ミサイルを撃つ国なのに、インクがないからと貨幣の発行ができないだろうか。ただし、トンピョの流通がうまくいって、トンピョが5000北朝鮮ウォン紙幣の代わりになるならば、5000北朝鮮ウォン紙幣の発行量を減らしてもいいだろうし、そうなれば貨幣の発行費用を少しでも節約できるだろう。しかし、それが主な目的ではない。主な目的は、貨幣発行費用の節約ではなく、外貨を国庫に入れることであり、北朝鮮ウォンの流通量を減らして、北朝鮮ウォンの価値を上げようというものだ。

ーートンジュたちの有休資金を引き出すためならば、より大きい単位のトンピョを発行すべきだろうが、5000北朝鮮ウォン券が主に発行された理由は?

まずは北朝鮮ウォンの最高額紙幣が5000ウォンなので、より大きい単位(のトンピョ)を発行したら混乱が生じると判断した。より重要なことは、トンジュたちに国が外貨を吸収するためにトンピョを発行したという印象を与えないことだ。実際、外貨を使う時に活用するためのものに過ぎないことを認識させるのが重要だと見ている。それで、市場で最も使いやすく、最も慣れ親しんだ単位にしたのだ。

ーー最近、為替レートが1米ドル5000北朝鮮ウォン台を維持しているが、トンピョに両替しやすいように5000ウォン券を発行したのか?

結果的にそうなったが、その見方が完全に正しいわけではない。正直言って、最初から1ドルを5000北朝鮮ウォンに合わせてトンピョを発行したわけではない。国は為替レートを自由に統制できない。レートがずっと5000北朝鮮ウォン台に留まるわけでもなく、国がレートを5000北朝鮮ウォン台に維持することもできない。

ーー今のところ、トンピョの使用がレートに影響を与えていない?

そうだ。トンピョの(発行)量は少ない。レートに影響を及ぼすほどではない。上層部(朝鮮労働党中央委員会)は、ひとまずトンピョに対する人々の反応と四半期の指標を見て、もっと発行する計画だ。現在、トンピョの動向を把握しようとしている。年末までには四半期別の指標をベースに、運用計画を立てる立場なので、来年初頭になってようやくトンピョの使用を本格化させるか、静かに消し去るかの決定がなされるのではないだろうか。