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中国との国境に接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)で先月、国境警備隊の20代の隊員が武装したまま姿をくらます事件が起きた。当局は行方を追っているが未だに見つかっておらず、脱北したものと思われる。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)の情報筋によると、先月30日に国境警備隊の隊員1人が、潜伏哨所で夜間勤務中に、30発の実弾が装着された自動小銃を持ったまま姿を消した。

国境警備隊司令部は、国境の警備を強化し、周辺の村々で捜索を行うなど行方を追っているが、今月9日の時点でも捕まっていない。周囲の脱北ルートを周知しているだけあり、脱北した可能性が非常に高いと、情報筋は見ている。

(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」北朝鮮、軍人虐殺の生々しい場面

この隊員は20代で、6年間国境警備隊で勤務しているが、上官や他の隊員との間に目立ったトラブルはなく、勤務状況も誠実だったという。その一方で同僚は、彼が目の前の中国をうらやましがるような発言をしていたと証言した。

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「毎日潜伏勤務を行いながら、目の前に見える中国の発展した様子を眺め非常にうらやましがっていた」
「わが国(北朝鮮)はなぜ中国のように開放をせず、国境を封鎖して貧しさを自ら招いているのかわからないと、当局の国境封鎖に不満を吐露していた」(情報筋)

対岸の中国・吉林省の和龍市南坪鎮は、かなりの僻地だ。それでも車両の通行は北朝鮮と比べて多く、川向うの人々の暮らしに余裕があるように彼の目に映ったに違いない。

(参考記事:新規配属の北朝鮮国境警備隊が「豊かな中国」を見て腰砕けに

別の情報筋は、当該の隊員が未だに捕まっていないことに触れ、彼を「賢く肝の座った軍人」だと褒め称え、どうか捕まらずに無事に脱北できるよう祈っているという、地元住民の反応を伝えた。

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茂山は、北東アジアで最大規模の鉄鉱石埋蔵量を誇る「朝鮮の宝」こと茂山鉱山を擁し、地元民も北朝鮮国内では豊かな暮らしをしていたが、国際社会の制裁で鉄鉱石の輸出ができなくなり、不況に喘いでいる。

そこに加えての、コロナ鎖国による生活苦と食糧難。それにもかかわらず、当局は生活苦の解消に力を入れるのではなく、人々をさらに苦しめるように、金正恩総書記を偶像化(神格化)するモザイク壁画の建設を指示。地元民は相当不満が募っていると伝えられている。まさに、多くの人が脱北を夢見てもおかしくないような状況と言えよう。

(参考記事:「我々を欺いている」金正恩の“偶像化”を不審がる北朝鮮国民