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中国には数万人から数十万人とも言われる脱北者が潜伏していると見られている。その多くは女性だが、短期間の出稼ぎに来た者もいれば、人身売買の末、あるいは自ら望んで中国人男性と結婚、家庭を築いた人もいる。

中国当局はかつて、個々人の事情を問わず、脱北者であることがわかれば無条件で北朝鮮に強制送還していた。その後、中国人と結婚して問題を起こさず平穏に暮らし、地元公安当局に登録している脱北女性に関しては、強制送還の対象としないようになっていた。

ところが最近になって、そんな女性たちを次々に逮捕するようになった。猫の目のように代わるやり方に、脱北女性もその家族も恐怖に震えていた。そして直近では、公安当局が中国国民である脱北女性の夫も処罰するようになったと、現地のデイリーNK情報筋が伝えている。

(参考記事:中国公安「在住公認」の脱北女性を次々逮捕で広がる不安

「最近、公安の動きが尋常でない」と伝えたこの情報筋は、遼寧省朝陽市で、地元公安局の脱北女性に関する調査について説明した。

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朝陽市公安局は今月初め、農村地域に居住する脱北女性の実態について調査を行った。その過程で、脱北女性との同居を登録していない中国人の夫に対して「脱北者を匿った」容疑で出頭命令を出した。

公安局は男性らを勾留した上で、妻を連れてくること、本人は1週間留置場に入ること、脱北者を匿った罰金として1万5000元(約25万5000円)を支払うこと、という3つの命令を下した。

ただし、夫には「書類に印鑑を押しさえすればいい」と安心させ、実際、脱北女性を逮捕、強制送還したりはしていないという。また、1週間経って釈放する際には、「うまく説得して妻を連れてこい」「公安の力で、誰も手を出せないよう安全を保証してやる」などと告げたという。

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どうやら公安局の意図は、脱北女性の逮捕、強制送還にはなく、女性の個人情報を確認し、管理しようというもののようだ。2019年末、遼寧省の一部地域で脱北女性の登録作業が行われたが、「何をされるかわからない」と恐れ、登録に応じなかった女性が多く存在していることを示唆している。猶予期間が過ぎ、強制的に登録をさせようというのだろう。

そもそもコロナ鎖国を実施している北朝鮮は、中国が強制送還しようとした脱北者の受け入れを拒否。国境沿いの収容所は、行き場を失い、ただただ勾留されているだけの脱北者で溢れている。そんな現状で脱北女性を逮捕し、家族と引き離して地域社会に波風を立てて得られるメリットなど何もないだろう。

(参考記事:中国の収容所が「超満員」に…食糧難で脱北者が増加

公安にいくら大丈夫だと説得されても、恐怖心が消えない彼女らは「強制送還されるのではないか」という不安に駆られ、行方をくらましたケースもあるという。情報筋は、脱北者の立場で「強制送還しない」という公安の言葉をどうやって信じられようかと、同情を示している。

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その恐怖から完全に逃れるためには、中国の戸籍に登録し、身分証を発行してもらうことだが、「罰金を払えば身分証をくれるのか」との問いに、返ってきたのは「法的に不可能だ」との答えだった。

自宅周辺や朝陽市内に出かけるには問題がないが、鉄道、バスを使って遠距離移動するには、身分証の提示が求められる。韓国行きなどの「問題」を起こさないように、地元に縛り付けておこうというものだろう。また、政策が変わって強制送還することになれば、身分証を所持していることがネックになりかねないという理由もあるのだろう。