北朝鮮で古紙の山から「顔」が見つかる大事件…当局が徹底捜査

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1970年代から使われていた北朝鮮の100ウォン紙幣、2002年に発行された1000ウォン紙幣と5000ウォン紙幣は、いずれも北朝鮮国民の間で不評だった。紙幣の表面に金日成主席の顔が描かれていたからだ。

日本のかつての御真影のように、金日成主席、金正日総書記の肖像画が命より大切とされる北朝鮮では、いくら紙幣と言えども下手に折ってしまうと、肖像画を粗末に扱ったとの理由で政治犯にされかねない。

北朝鮮において、最高指導者の権威を傷つけることは最も重大な罪だ。

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2009年に断行された貨幣改革(デノミネーション)に合わせて発行された新紙幣には、5000ウォン紙幣だけに金日成氏の顔が描かれたが、2013年発行分からは彼の生家の絵に切り替えられている。

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使い勝手の悪さにおいては、朝鮮労働党機関紙・労働新聞も同じだ。「ご尊顔」が掲載されているため、その部分は古新聞として使うことは許されず、切り抜いて取っておいて、別途回収してもらう。

(参考記事:北朝鮮、プロパガンダ一色の「労働新聞」が意外な使い道で脚光

そんな「ご尊顔」が、製紙工場の古紙の山の中から発見され、大騒ぎになっていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

清津(チョンジン)市郊外の新岩(シナム)区域の製紙工場に先月21日、大量の古紙が運び込まれた。その中から次から次へと「革命伝統印刷物」が発見される「事件」が起きた。

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発見されたのは金日成全集、金日成氏の回顧録「世紀とともに」、彼の美談が綴られた回想実記集「人民の中で」などだ。

今までに109巻が出された「人民の中で」だが、国営の朝鮮中央通信は2018年4月14日、107巻の出版を伝え、その内容に触れている。以下、一部抜粋する。

同巻には、主席の業績と高まいな人民的風ぼうを伝える18[件の回想実記が編集されている。

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主席が人民の衣料問題を解決するために新義州化学繊維工場を建設するようにし、繊維原料であるアシの生産を増やすための課題を提示した内容が回想実記「『アシはすなわち絹です』」に叙述されている。

朝鮮人民により裕福で幸福な物質・文化生活を与えようと不眠不休の現地指導を歩み続けた主席の精力的な指導が、回想実記「農村商店で招集した緊急会議」「児童服商店に残した思いやりに富む恩情」「リンゴ加工品にこもっている慈父の愛」「獐項里に刻まれた愛の足跡」に収録されている。

さて、これらの革命伝統印刷物だが、清津市内の学校、工場、機関で行われた古紙集めキャンペーンで回収されたものの中に混じっていた。中には、図書館の蔵書印が押された貴重なものまで含まれていたこともあって、さらなる大問題へと発展してしまった。

咸鏡北道安全局(県警本部に相当)、保衛局(秘密警察)は、通報直後に捜査要員を現場に派遣し、貴重な本が図書館から流出した経緯を探るため、個人に対する集中検閲(監査)を行うなど、徹底した捜査を行っている。

彼らは、道内の図書館の貸し出し台帳、閲覧台帳をすべて確認し、このような特殊な革命伝統図書を管理、保管する権限を持つ党委員会、党のイルクン(幹部)や、定年退職した者までを対象に、捜査の網を広げている。

また、問題のある児童、生徒、学生による犯行の可能性があるとしつつ、朝鮮少年団、青年同盟(社会主義愛国青年同盟)が、集めた古紙のチェックしておきながら革命伝統図書を紛れ込んでいるのを見つけられなかったとして、責任者を処罰する方針を示している。

当局は、この手の事件を不敬かつ不穏なものとして、徹底したかん口令を敷くのが一般的だが、今回は製紙工場の幹部の家族や従業員を通じて、あっという間に市内に噂が広がってしまった。話を聞きつけた市民は「子どものやったことだろう」としつつ、犯人が逮捕されれば、その親も無事では済まされないだろうと口々に話しているとのことだ。

肖像画や革命伝統図書の類が粗末に扱われる事態は各地で起きており、当局は最高指導者の権威に関わる問題として、厳しく対処する方針を示している。

(参考記事:北朝鮮で「命より大切な将軍様の肖像画」が粗末に扱われる事態多発

だが、バレさえしなければいいと、粗末に扱う人が多いようで、煮炊きの燃料として使って「証拠隠滅」する事例も報告されている。

(参考記事:最高尊厳=金氏一家の著作も今では燃料やトイレットペーパーに・・・