公開処刑より恐ろしいものは…北朝鮮「窃盗事件」多発の深層

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農繁期を迎えた北朝鮮だが、農業機械の部品不足が深刻化している。長い間止められていた輸入が一部解禁されたものの、部品が全国の農場に行き渡るほどには至っておらず、各地では部品の窃盗事件が相次いでいる。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、窃盗団によるトラクターや田植え機の部品の窃盗事件が多発しているとして、様々な防犯対策が行われているが、被害が減る気配はなく、社会問題化していると伝えた。

こうした現象は、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の際にも頻発した。北朝鮮当局は当時、公開処刑を頻繁に行うなどして、恐怖政治で抑え込みを図った。北朝鮮の人々はもちろん、そのことを知っている。それにもかかわらず、今また盗みに走るのはなぜか。

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情報筋によると、最近の窃盗団は除隊軍人などからなる5〜8人のグループで、農場の管理委員長、作業班長の庇護の下に、他の農場に忍び込んでタイヤ、ベアリング、バッテリーなどを盗み出している。

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部品を盗まれると作業効率が低下し、収穫量が減少することになる。農場員は収穫のうち、国から課されたノルマの分を国に納めて残りを自分の取り分とするが、それがなくなってしまいかねない極めて深刻な事態だ。もしかしたら北朝鮮の人々は、盗みで罰せられるより、飢えの苦しみの方がはるかに恐ろしいことを知っているのかもしれない。

さらには、ノルマが未達成となれば処罰されかねない。そのため、自分の農場の農業機械の部品が盗まれれば、他の農場の農業機械の部品を盗むという悪循環に陥っているのだ。

当局は、順川(スンチョン)市の新里(シンリ)協同農場の窃盗団が、豊徳(プンドク)、西南(ソナム)の協同農場に忍び込み、農業機械の部品を盗み出した容疑で逮捕され、全員が処罰されたとして、窃盗に警告を発している。

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協同農場の農業機械はいずれも国家財産とされ、農場はその使用権のみを有する。その機械の部品を盗み出すことは、9年以下の労働鍛錬刑(懲役刑)に(刑法91条)、国家財産を故意に破損しその罪状が重い場合には10年以上の労働教化刑(懲役刑)に(刑法99条)に処される。情報筋は、窃盗団に下された判決の詳細には触れていないが、懲役刑であったことは間違いないだろう。

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そして、これほどの重罰をもってしても効果がなければ、当局は超法規的な公開処刑に乗り出す可能性が高い。

また、各農場は、武装した自警団を動員して農業機械の夜間警備に当たらせているが、彼らは元々農場員。このような状態が続くなら、昼間の農作業にも支障が出かねない。当局の警告、農場の防犯対策にも、同様の犯罪は減る気配がない。根本の理由が解決していないからだ。

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「国が部品をまともに供給してくれないので、人々は泥棒をせざるを得ない状況」(情報筋)

当局がコロナ対策で輸入をストップさせた影響で、全国的には7割の農業機械が稼働できない状況に追い込まれていると、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の報告書は指摘している。

(参考記事:コロナ鎖国で部品不足…北朝鮮で農業機械の7割が稼働できず

だが、輸入が行われていたコロナ前でも、今と程度の差はあるだろうが、同様の犯罪が多発していた。部品の輸入をしたくとも、充分な予算が確保できず、結局よそ様のものに手を出してしまうという構図だ。

(参考記事:シャベルからトラクターの部品まで…窃盗が蔓延する北朝鮮の農場