下の写真は2016年5月に北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)の協同農場にあるポンプ場を撮った写真だ。水道管の蓋が、何十本ものネジで固く止められていることがわかる。ここまで厳重にしなければならないのは、金属泥棒が横行しているからだ。

平安北道の協同農場のポンプ場(撮影:デイリーNK内部情報筋)
平安北道の協同農場のポンプ場(撮影:デイリーNK内部情報筋)

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、ある農場からシャベル、鎌、農機具の金具など様々な金属製品が一夜にして盗まれたという。

白岩(ペガム)郡の西頭(ソドゥ)協同農場では、農機具に加え、コンバインとトラクターの部品を盗まれてしまった。また、「ジャガイモ革命発祥の地」として当局のプロパガンダに登場する10月18日総合農場では、水を汲み上げるポンプの付属品が盗まれてしまった。

(参考記事:打ち捨てられた「将軍様の革命的ジャガイモ農法」

「連中はポンプを使わない時期を狙って盗みに入ったようだ。この農場は中央の支援を受けている国営農場なので、一般の協同農場より良い設備が入れられていることを知っていたのだろう」(情報筋)

つまり、農場の事情を知る近隣の何者かが盗み出したということだ。

北朝鮮では、新年になると「堆肥戦闘」(肥料用の人糞集め)キャンペーンが大々的に繰り広げられるが、同時に行われるのが農機具展示会だ。当局は農場員に農機具を制作して展示会に出品することを命じる。

(参考記事:亡命兵士の腸を寄生虫だらけにした北朝鮮「堆肥戦闘」という名の地獄

しかし、材料もカネもなければ、人糞集めや光明星節(2月16日の金正日総書記の生誕記念日)の行事の準備で忙しく暇もない。そこで他人様の金属製品に手を出すというわけだ。

農場の管理委員会は、多発する窃盗にこれと言った対策を打ち出せずにいる。

「春の種まきの時期になれば、労働党中央委員会の4課の幹部がやってくるので、その前に部品を調達してポンプを修理しなければならないが、財政事情が悪いため、管理委員会は職員に『ともかく調達してこい』と丸投げしている」(情報筋)

つまり、職員が自費で買うしかないのだ。シャベルや鎌は、工場に行って焼酎を何本か渡せば売ってもらえるが、コンバインやトラクターの部品は高価なため、職員は頭を抱えている。幹部は「来年からは農業機械倉庫の警備を強化しろ」と言うだけで何もしようとしないという。

このように北朝鮮、特に農村部では窃盗が多発している。昨年秋には、農場から農耕用の牛が盗まれる事件が多発した。経済制裁による燃料費高騰で農業機械を使えなくなったからだ。

(参考記事:経済制裁に苦しむ北朝鮮で「牛泥棒」が横行する理由

民間人による窃盗はまだかわいい方だ。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士たちは国から食糧配給がまともに受け取れないため、餓死を免れるために民家や農場を集団で襲撃し、「馬賊」として恐れられている。国内だけでは飽き足らず、国境を越えて中国に忍び込み、強盗殺人を犯す者すらいる。

(参考記事:【スクープ撮】人質を盾に抵抗する脱北兵士、逮捕の瞬間!