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今月初め、北朝鮮の平壌医学大学病院で男性が死亡した。死亡したのは、金正日時代から活躍し、金正恩総書記からも厚い信任を得ていた経済イルクン(幹部)のA氏。その死を巡って、騒動が起きている。

北朝鮮内部にいるデイリーNKの高位情報筋によると、その経緯は次のようなものだ。

心疾患と高血圧を抱えていたA氏は、休職して平壌医学大学病院に入院し、治療を受けていた。

今月初め、担当の医師が気力回復のために「コカルボキシラーゼ」という薬剤の注射を行なった。すると、A氏はその直後に死亡してしまった。医薬品医療機器総合機構のページによると、これはビタミンB1製剤で、神経痛、筋肉痛、関節痛、末梢神経炎、心筋代謝障害などに効能があるとのことだ。つまり、日本で言うところの「にんにく注射」だが、情報筋の説明によると、北朝鮮では肺疾患、高血圧、肝炎など病気を問わず万病に効く薬のように使われている。

担当医師は、注射薬は北朝鮮の龍興(リョンフン)製薬工場が自主技術で生産したものを使ったと主張したが、別の医師たちは、高位級幹部に国産の注射薬など投与できないはずだと反論。結局、中国製を投与していたことがわかった。

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コロナ鎖国により医薬品の輸入が困難となり、当局は医薬品の国内開発の重要性を強調しているが、一般国民の間ですら国内の製薬工場で生産された医薬品は信頼されていないのが現状だ。詳細は不明だが、国内で様々な偽物が流通している現状を考えると、この注射剤が偽物だった可能性も考えられる。

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A氏に投与されたのが中国製のコカルボキシラーゼであったことは間違いないようだが、死亡との因果関係は明確になっていない。それにもかかわらず金正恩氏は、国の貴重な人材が失われたと、平壌の主要病院から中国製の医薬品を撤去せよとの指示を下した。

さらに、コロナワクチンを自主開発するために取り寄せたワクチンサンプルのうち、中国製も分析、研究から除外せよとの指示も下した。ただでさえ医薬品が不足する中、深く考えたとは思えない指示で、患者に必要な投薬ができなくなる事態が予想される。また、ワクチンの国内開発にも支障が出るものと思われる。

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(参考記事:北朝鮮、コロナワクチンを「産地偽装」か

平壌医学大学病院では、問題のコカルボキシラーゼがどの貿易会社を通じて輸入されたのか調査を行っている。原因は明確になっていないものの、医薬品の保管状態の杜撰な実態が明らかになりつつある。平壌の主要病院ですら、度重なる停電により、要冷蔵、冷凍の医薬品も常温保管されているというのだ。

コロナワクチンは製造社ごとに必要な保管条件は異なるが、例えばファイザー社製のワクチンの場合、マイナス75度のでの超低温冷凍庫での保存が求められる。しかし、一般医薬品の冷蔵、冷凍保存すらまともにできないのに、ワクチン接種などできるのかと疑問の声が上がっている。

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情報筋も、「援助としてワクチンを輸入しても医療機関に保管設備がないことが問題になるだろうと、世界保健機関(WHO)からも指摘されている」と述べている。