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北朝鮮の社会安全省(警察庁)は昨年8月、新型コロナウイルスの国内流入を極度に恐れる金正恩総書記の指示に基づき、国境地帯、緩衝地帯に無許可で近づく者には無条件で銃撃を加えるとの布告を出した。

同様の通告を受けた中国当局はこれに反発。交渉の結果、中国人に対して無差別に銃撃して人的被害が発生した場合、北朝鮮から輸入する商品の関税を3倍にし、北朝鮮側が被害者に賠償金を支払うことで、昨年9月に合意している。しかし、それ以降も北朝鮮人、中国人問わず、射殺される人が相次いでいる。

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緊張感漂う中朝国境の現状について、中国・吉林省の公安の幹部が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語っている。

吉林省公安局は上記の通告を受け、携帯のエリアメールや地域のテレビを通じて、いかなる場合も国境に近づいてはならないと自国の地域住民に警告を発した。

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この幹部は、国境沿いに住む中国側の住民の動向については触れていないが、北朝鮮国民が命がけで川を渡ってくる現状について語っている。

先月末には、吉林省の長白朝鮮族自治県の四道溝村付近で、国境を流れる鴨緑江を渡って中国側にたどり着いた北朝鮮人2人が、中国人民元を出して除草剤を購入し、北朝鮮に戻っていったとのことだ。

また、小規模なポッタリ(担ぎ屋)の密輸が十三道溝村と十五溝村付近でも複数回目撃されている。2〜3人の北朝鮮人が数回にわたり、川を渡ってタラの芽を販売したが、いずれも量が少なかったことから、当面の食費を稼ぐため山で取った山菜の密輸を行なっているようだと、この幹部は説明した。

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いずれの地域も、中国側、北朝鮮側ともに人気(ひとけ)の少ない地域ではあるものの、国境警備隊に発覚すれば集中射撃を受けかねない。その日の食べ物のために命をかけなければならないような状況に置かれているのが、この地域の北朝鮮の人々の現状だ。

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一方、しばらく途絶えていた北朝鮮からの密輸目的の往来が、最近になって復活したと語る中国側の住民もいる。

この住民は、北朝鮮の両江道(リャンガンド)に住む友人から「国境付近で会ってくれ」との連絡を受け、先月末のある日の午前1時ごろに、中国側の川岸で落ち合った。相手が持ってきたのはタラの芽だった。

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中国でもありふれているので、持ってきたところであまり売れないだろうと伝えたが、大量に取ったので塩漬けにしたものを買い取ってくれないかと頼み込まれたという。かつては高価な商品の取り引きを行なっていたというが、タラの芽くらいしか持ち出せない現状に同情し、今までの仲を考えて、買い取ったという。

その後も何度か取り引きに応じているというが、以前なら同行していた国境警備隊員の姿はなかった。かつては、隊員にいくらかの現金を包み、見張りをしてもらっている間に密輸を行ったり、最初から結託して密輸を行なっていた。取り締まりが厳しくなってそれも困難となり、発覚しないかと不安げに当たりを見回していたとのことだ。

「長年付き合いのある北朝鮮の友人があそこまで怯えているのは今まで見たことがなかった、そんな恐怖の中でも密輸するのを見ると、北朝鮮国内の事情は本当に切迫しているようだ。ともかく、友人が無事であることを祈るばかりだ」(住民)

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