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北朝鮮の社会システムで特徴的なものと言えば「動員」だ。所属する職場や人民班(町内会)を通じて、町内の清掃、道路の補修から大規模な建設工事に至るまで様々な形で労働力の提供を強いられる。

その代表例が、毎年春と秋に行われる「農村支援」だ。都市住民を集中的に農村に送り込み、農作業の手伝いをさせるものだ。

(参考記事:「コメで革命を守ろう!」北朝鮮紙、田植え戦闘をアピール

ところが、「強制のあるところにカネが湧く」のが今の北朝鮮。動員を巡ってカネが飛び交う現状を、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事の発端は、まだ寒さの残っていた先月のこと。恵山(ヘサン)教育大学の学生に動員令がかけられた。

「学生一人あたり2メートルの区間を割り当て、幅50センチ、深さ2.4メートル(の穴)を掘らせた」(情報筋)

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穴掘りの目的はケーブル埋設。詳細について情報筋は触れていないが、恵山市人民委員会(市役所)の軍事動員課が監督に当たっていることから、軍事用のものであることに違いないだろう。

この手の動員、かつては男女数名を1組にして行なっていたが、今回は個人個人にノルマが割り当てられた。3月の恵山は、地面の氷が完全に溶け切っておらず、力の弱い女性は穴掘りに苦労していたとのことだ。軍事動員課や関係部門のイルクン(幹部)が、定規で穴の大きさを測り、規定を満たしているのを確認してもらってようやく解放される。

そして、教師を目指す若い学生たちだが、どこで学んだのか「この国で生き抜く知恵」を働かせて、この動員から逃れていた。カネを払って代理で働く人を雇ったのだ。賃金は2メートルで160元(約2670円)。だが、ノルマがどんどん増やされたようで、結局は500中国元(約8330円)以上払うことになった。

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恵山の経済は、中国製品の密輸、販売によって支えられてきたと言っても過言ではないが、コロナ禍での国境警備の強化、封鎖令(ロックダウン)の乱発で、餓死に追い込まれる人も出ている。大枚をはたいて人を雇える学生は、かなりの富裕層や幹部の子息だろう。

(参考記事:ロックダウンわずか1日で解除…北朝鮮「コロナ対策」の朝令暮改

このような「代打労力」は各地で広範に行われている。個人の商売が忙しく、動員に応じる暇などないというトンジュ(金主、新興富裕層)や幹部が、カネを払って代わりに行ってくれる人を雇ったり、監督官庁にワイロを払ったりして、動員を免れるという手法だ。

工事を発注した国や地方政府が、働く人に賃金を支払うという当たり前のことが行われず、働く人が別の働く人に賃金を支払うという、きわめていびつな現象が起きているのが今の北朝鮮だ。

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