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中国の丹東と北朝鮮の平壌を結ぶ国際列車は、外国人観光客、行商人、出張者などが利用するゴールデンルートだ。北朝鮮に入って1つ目の駅、新義州(シニジュ)を出てしばらくすると、車窓からオベリスクが見えてくる。永世塔だ。

「偉大な首領様は永遠にわれわれのそばにいる」と刻まれたこの塔は、1994年7月に逝去した金日成主席を悼むもので、国民から徴収した資金で建てられた。このような永世塔は全国各地に存在し、韓国国会の尹相現(ユン・サンヒョン)議員は2012年10月、韓国JTBCの番組で、全国で3200もの永世塔が建設中だと述べている。

そんな新義州の永世塔を鉄条網で囲む作業が行われたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が現地住民の話として報じた。

作業が始まったのは先月20日で、今月2日に完了した。鉄条網には高圧電流が流れていて接近するのは到底不可能だが、囲いの北側にはドアが取り付けられている。これについて情報筋は、今月15日の太陽節(金日成氏の生誕記念日)などに、塔に献花できるようにするためのもののようだと見ている。

(参考記事:展示会中止で余った「金正日花」を住民に押し売りする北朝鮮の地方政府

永世塔は、銅像やモザイク壁画、肖像画などと並び、破損が絶対に許されない神聖なものだが、中央の指示に基づいて行われた今回の作業は、単純な警備強化ではないようだ。

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「当局が突如として偶像化永世塔に高圧電気鉄条網を設置して恐怖を煽っているのは、新義州地域に体制に抵抗する潜在的勢力が現れるかもしれないからだ」(情報筋)

地域では昨年来、コロナ防疫規則違反や不正腐敗などで摘発され、撤職(更迭)、出党(朝鮮労働党から除名)、さらには処刑された幹部が数十人にのぼり、「首脳部が不安感を抱くのは当然」(情報筋)という空気が漂っているようだ。

(参考記事:「制服を脱いでも許されない」金正恩命令に背き処刑も

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昨年、党幹部を養成する金日成高級党学校の校長ら幹部が、入学試験に絡んでワイロを受け取り摘発されるなど、党幹部の不正行為の摘発が相次いだ。新義州の南隣、龍川(リョンチョン)の情報筋によると、撤職、出党、処刑された幹部の多くが平安北道の党、行政機関出身だったという。

新義州税関では、幹部や職員80人が不正蓄財で摘発され、多くの幹部が処刑される事件が起きたが、この情報筋は、不正蓄財は表面上の理由で、実際は金日成高級党学校の平安北道出身幹部勢力を粛清の一環だったことは、それなりの幹部なら皆知っていると述べた。

(参考記事:北朝鮮税関80人、巨額の不正蓄財摘発で一部は収容所送り

それ以外にも、朝鮮労働党平安北道委員会の責任書記(地域のトップ)や新義州市の保衛部長(秘密警察のトップ)も忽然と姿を消すなど、幹部に対する大々的な粛清が行われ、当局は今でも平安北道に潜む反対勢力を捕まえるとして粛清を続けており、道内には首脳部に対する反感を持った幹部や住民が意外と多いと、情報筋は述べた。

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それに対して当局は、永世塔を鉄条網で覆う準戦時の雰囲気を醸し出し、新義州でさらにどんなことが起きるかわからないと住民に事前警告し、さらに国境線にも高圧電流の流れる鉄条網を設置する予定だと、情報筋は明らかにした。

平壌の高級幹部出身の脱北者によれば、当局は、2004年4月に龍川駅で貨物列車が爆発し、甚大な被害が発生した事件について、金正日総書記に対する暗殺未遂事件と認識。現地の権力機関の幹部や関係者を優先して取り調べたことを例に挙げて、平安北道には金日成時代から反体制勢力が存在している危険地域として、道や新義州市の党委員会の人事に相当慎重になっていると説明した。

(参考記事:暗殺狙うスパイ団を摘発…金正恩氏が警戒する「国内の敵」