金正恩が軍に開発を厳命した「動く銅像」の極秘計画

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北朝鮮を訪れる外国人のほとんどが案内されるのが、平壌の万寿台(マンスデ)の丘にそびえ立つ金日成主席、金正日総書記の銅像。いずれも高さ22.5メートルで、奈良・東大寺の大仏(14.7メートル)、上野の西郷隆盛像(3.7メートル)などと比べると、いかに巨大なものであるかがわかる。平壌のものより規模は小さいものの、両氏の銅像は北朝鮮の各地に存在する。

そんな銅像をめぐり、新たな極秘プロジェクトが始まった。その名も「デジタル自動化システム導入垂直型史跡坑道」だ。一体どういうものなのか。詳細をデイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部情報筋が伝えた。

朝鮮人民軍の総政治局、総参謀部は連名で、各司令部と軍傘下の大学、軍官学校などに対して「有事の際の銅像保衛事業を再点検し、これを革命の首脳部の安全と直結した重要な事業として扱え」との命令文を下した。

その一部である「デジタル自動化システム導入垂直型史跡坑道」とは、銅像の下に穴を掘って、自動で銅像を収納したり出したりできるようにするというものだ。空襲警報が発令されれば、指揮部の庁舎に設置されたボタンを押すだけで、自動的に銅像が地下に収納される。なんだかアニメ「マジンガーZ」を思い出してしまう。

たかが銅像くらいで…と思う向きもいるだろうが、北朝鮮においては、最高指導者の権威を守ることは最も重要な問題なのだ。

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また、学校に掲げられた御真影が火災や災害で破損した責任をとって自決する人がいた戦前の日本と同じような雰囲気と考えれば、理解しやすいだろう。

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このシステムは今年の秋までの完成が目標とされており、工事の進捗度が、担当者らの忠誠心の尺度になるという。つまり、工事が遅れれば国や党、最高指導者への忠誠心が足りないと判断され、人事面で不利益をこうむる。また、粛清の口実にもされかねないので、各部隊の幹部は是が非でも秋までに完成させようとするだろう。このように、忠誠心をかけて競争を煽り、結束力を高めるのは北朝鮮がよく使う手法だ。

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また、命より大切な肖像画が粗末に扱われる事態も起きており、今回のプロジェクトには思想的な「たるみ」を引き締め、体制をさらに強固にするという目的もあると思われる。

(参考記事:北朝鮮で「命より大切な将軍様の肖像画」が粗末に扱われる事態多発

指先ひとつで自動的に巨大な銅像がせり出すシステム。さすがに各部隊で作るのは難しいと考えたようで、工兵部隊、技術部隊の専門家に依頼して行うことにして、来月1日から工事に入る。

また、当局は金策(キムチェク)工業総合大学の工学研究者、第1旅団の技術イルクン(幹部)を動員し、作業の支援に当たらせることにした。

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それでも、各部隊は頭を抱えている。銅像が入るだけの穴を掘るには、相当な労働力が必要だからだ。また「銅像だけではなく、史跡碑用の坑道まで掘れという命令が下されるかも知れない」との声も上がっている。

ただ、金正日氏の生母である金正淑(キム・ジョンスク)氏の銅像に関する指示は、今のところ下されていない。

今までも両氏の銅像を巡っては、監視カメラを設置した上で、住民を駆り出して24時間体制で警備を行ってきたが、さらに完璧なシステムを備えようということだろう。

「完成すれば銅像の安全管理は、各部隊の政治部が行うようになり、体制守護に関する事業は引き続き発展するだろう」(情報筋)

コロナ鎖国による食糧難で、多くの国民が耐乏生活を強いられ、餓死者さえ出ている状況で、銅像を守るプロジェクトに巨額の予算を投じる。これが北朝鮮という国だ。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮」だけの一家を待っていた悪夢の8日間