日本で大ブレイクした韓流ドラマ「愛の不時着」には、主人公の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の将校リ・ジョンヒョクが、地雷を踏んでしまい動けなくシーンが登場する。
朝鮮半島を南北に分断する軍事境界線と、そこから南北それぞれ2キロに設定されている非武装地帯には大量の地雷が埋設されている。韓国軍合同参謀本部の2016年の発表によると、韓国側127万発、北朝鮮側80万発の合計、207万発が埋設されている。これはあくまでも推定値で、実際の埋設数は誰にもわからない。
水害などで流出し、民間人の居住地域に流れ着いて大騒ぎになることもあれば、2015年には韓国軍の下士官2人が、非武装地帯に埋設された木箱地雷を踏み、重傷を負う事故も起きている。
(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間)
今月10日にも、朝鮮人民軍の兵士2人が地雷を誤って踏んでしまい、重傷を負う事故が起きたが、場所は軍事境界線から遠く離れた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の鍾城(チョンソン)郡を流れる豆満江の河原だった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面現地のデイリーNK内部情報筋の説明した事件の概要は、次のようなものだ。
国境警備の強化のため、現地に派遣されていた朝鮮人民軍の特殊部隊「暴風軍団」の兵士2人は、10日深夜、河原で潜伏勤務を行っていた。そのとき、川の方から懐中電灯が5回点滅するのが目に入った。これは、密輸や脱北を試みる者を発見したという意味の信号だ。
通常は、上官に報告して指示をあおぐのだが、どういうわけか2人は報告を怠ったまま、河原へと接近し、誤って地雷を踏んでしまった。爆発で負傷した2人は、咸鏡北道人民病院に緊急搬送され、軍の11号病院に移されて治療を受け、一命はとりとめたものの、一人は視力を、もう一人は腕と足を失った。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そうなれば栄誉軍人(傷痍軍人)として除隊するほかないが、北朝鮮社会には障害者差別があり、かつては充実していた福祉も今は形骸化。苦しい生活を強いられることは火を見るよりも明らかだ。
(参考記事:体はボロボロで家庭も崩壊…北朝鮮「負傷兵」たちの悲惨な末路)今回爆発した地雷だが、朝鮮戦争のときに埋設されたものではないようだ。2019年9月、軍の最高司令部は咸鏡北道の会寧(フェリョン)、穏城(オンソン)などの河原に地雷の埋設を指示している。昨年10月には、両江道(リャンガンド)の普天(ポチョン)郡で、地雷埋設作業中に爆発事故が発生、暴風軍団の兵士1人が死亡、3人が負傷した。
(参考記事:北朝鮮、中国との国境に地雷埋設するも爆発事故が多発)今回の事故の調査を行った軍の上層部は、事故の原因を3つに集約した。まずは負傷した2人が、地雷埋設地域についての学習を怠ったことだ。この地域に派遣された兵士は、どこに地雷が埋設されているかについて講習を受けたはずだが、2人がそれを認知していなかったのは、学習態度に問題があったということとのことだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面続いて、緊急事案発生時にはまず上層部に報告して指示をあおぐという手順を無視した点、手柄を独り占めしようとする「個人英雄主義」から、他の兵士たちと協力して対処しようとしなかった点を挙げた。
上層部は、負傷した兵士2人の不注意な行動だけに問題があるのではなく、中隊員に監督不行き届きがあったとして、中隊長、政治指導員の責任も追及する方針だとのことだ。
それにしても、2人が目にした信号とは何だったのだろうか。軍は事故発生地点を詳しく調査したが、異変は見つからなかった。川向うの中国側には農村が点在し、人や車の移動があることから、軍は2人がそれを信号と勘違いしたものと見ている。