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毎年3月8日は国際女性デーだ。今年、国連が示したテーマは「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」だ。

この日を「国際婦女節」の名前で祝う北朝鮮だが、建国前の1946年7月30日、男女平等権法令を含む一連の政策を発表すると同時に、女性の健康のための保健事業に力を入れた。また、建国後も女性の家事労働からの解放を支援する政策など、ジェンダー平等において非常に先取的な取り組みを行っていた。

その後、北朝鮮におけるジェンダー平等はどこまで達成できたのか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

平安北道(ピョンアンブクト)のある住民は、国際婦女節を「家庭の生計を成り立たせるために1年中、苦労する女性が、男性から食事を出してもらう名節」として、夫の作った朝食を食べて、靴下をプレゼントされたと語った。

この情報筋は、北朝鮮の女性にとって国際婦女節は、太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)よりも意味のある日に位置づけられているとしたが、その理由は北朝鮮の市場経済化の進展による、家庭内における経済的地位の変化にある。

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「苦労して商売で稼ぎ、家族を食べさせている女性たちは、夫の党費の納付まで担うようになった。女性の主導権が徐々に強くなっている」(情報筋)

朝鮮労働党の党費は月給の2%に当たる金額と、「忠誠の資金」の名目で徴収される5000北朝鮮ウォン(約75円)からなる。男性は生活費はおろか、コメ1キロ分に相当する金額すら賄えないほどの超薄給だ。

すべての男性は、国が割り当てる職場に所属し、毎日出勤することを求められる。食料品や生活必需品の配給は職場を通じて行われていたが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」に際してシステムが崩壊。これにより男性は経済的主導権を失った。

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その穴を埋めたのが女性だった。必ずしも職場に属する必要がない女性が市場での商売で収入を得て、家計を担う大黒柱となった。配偶者を選ぶにあたっても、経済力のある女性の方が主導権を持つようになりつつある。

(参考記事:女性が「主導権」を握った北朝鮮の婚活事情。男性に「積極投資」する例も

北朝鮮当局は、そんな女性の権利回復を、既存の体制を脅かす脅威と見て抑えつける方向に動いている。ある北朝鮮女性がRFAに語る。

「わが国(北朝鮮)で家父長制文化の男尊女卑思想が崩れたことに続き、体制を支える核心党員の威信も家庭のやりくりを担う女性に抑え込まれた。そこで、当局は女性の思想から改造すると言って、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)を思想教養団体にして、教養事業と動員の強度を高めている」

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女盟の中央委員会は国際婦女節に合わせて開いた総会で、反社会主義、非社会主義との闘争(風紀取り締まり)を大衆事業に転換し、党の思想よりカネを重視する女性たちとの闘争を高めることを求めた。

(参考記事:「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

当局の反動的な動きに対して、黙ってばかりいる北朝鮮の女性ではない。平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、北朝鮮女性の意識が代わりつつある現状を伝えた。

かつてはただ単に食べて飲んで歌って踊るお祝いの日だった国際婦女節だが、今ではこの日が、米国女性が労働条件の改善と差別撤廃を求めて闘争に乗り出した日であることを知り、北朝鮮女性が自分たちの境遇を考えるきっかけとなっている。情報筋は、女性たちの声を次のように紹介した。

「当局が家頭女性(主婦)たちを女盟に縛り付けて、思想教養学習と無補修労働を強いることは女性の人権の蹂躙ではないか」
「母、妻、嫁、主婦として家庭と社会において道徳的義務と責任を強いる当局の宣伝は、結局女性を社会的に統制し、二重三重に搾取しようとする反人権的行為だ」

(参考記事:北朝鮮の女性が勝ち取った「自転車に乗る権利」

中国の繊維工場などに派遣された北朝鮮の女性労働者たちも、かつてはこの日を休みにしてパーティを開いていたが、今では当局が指定する伝統衣装を着て行事に参加させられるようになってしまった。それでも女性たちは、ピクニックに出かけて革命歌謡を大音量で流し、男性とともに西洋風のダンスを楽しむなど、小さな抵抗をしている。

(参考記事:「何かがおかしい…」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々