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毎月の保険料はしっかり徴収されるのに、いざというときの補償額がわからない。そんな奇妙な保険商品が北朝鮮に存在する。国営の朝鮮民族保険総会社の「住宅家庭財産保険」がそれだ。

デイリーNKは先月、北朝鮮当局が国民に対してこの保険への強制加入事業を進めていることを伝えたが、保険証書にあたる「住宅民家家庭保険カード」の配布が行われていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が続報を伝えてきた。

(参考記事:北朝鮮の強制加入生命保険、支払いに驚愕の条件

情報筋によると、道内の茂山(ムサン)ではカードの配布が始まり、その後で当局は各家庭に対して毎月2000北朝鮮ウォン(約30円)の保険料の支払いを強制している。

デイリーNKが情報筋を通じて入手したこのカードだが、カード状に切り取られた厚手の紙に世帯主の名前、住所、保険期間、保険金の額、保険料の額の欄が存在する。ただ、配布されるときには、保険金、保険料の欄は空欄になっている。

朝鮮民族保険総会社が発行した住宅家庭財産保険カード(画像:デイリーNK)
朝鮮民族保険総会社が発行した住宅家庭財産保険カード(画像:デイリーNK)

当局は、カード配布時に保険料の欄に受け取った人が直接2000北朝鮮ウォンと記入するように指示した。当初説明された保険料は年間4000北朝鮮ウォン(約60円)だったはずだが、いつの間にか2万4000北朝鮮ウォン(約360円)にされてしまっている。

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保険料が上がった分だけ、補償額も600万北朝鮮ウォン(約9万円)に上げてくれるのならまだ理解できなくはないが、補償額の欄は空欄のままだ。実際いくら支払われるのか、それ以前に本当に支払いそのものが行われるのかが不明だ。

保険会社は、保険金の支払い条件にも様々な制約を加えており、保険金を払わない気満々と捉えられても仕方がないだろう。

(参考記事:北朝鮮の強制加入生命保険、支払いに驚愕の条件

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実際、住民の間からは疑いと不満の声が上がっている。

「われわれの懐を狙った戦略だ」
「今みたいなコロナ経済難で、そんな多額の補償金を国がどうやって払えるのか」
「結局は国家の不渡りを防ぐために、住民からカネを巻き上げるための詐欺保険にしか見えない」

金正恩総書記は今年1月の朝鮮労働党第8回大会で、反社会主義的・非社会主義的傾向、権力乱用、官僚主義、不正・腐敗などと合わせて税金外の負担の阻止を訴えているのだが、が、複数の国家機関からなる国家保険委員会の傘下にある朝鮮民族保険総会社が、率先して金正恩氏の方針に違反するような行為を行っている形となる。

(参考記事:金正恩氏の「税金外の負担」禁止令、違反事例相次ぐ