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北朝鮮当局は先月29日、中国との国境に接する両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)と三池淵(サムジヨン)に30日間の封鎖令(ロックダウン)をしいた。三池淵で起きた密輸事件で、新型コロナウイルスが流入した可能性を恐れた措置と思われるが、市民からの強い不満で、18日間で解除した。

(参考記事:北朝鮮、1カ月の都市封鎖を18日で終了…背景に市民の不満

期間中は一切の外出が許されなかったのだが、それを利用して悪事を働いた突撃隊(半強制のボランティア建設部隊)の幹部が逮捕されたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

逮捕されたのは、再開発工事が行われている三池淵の突撃隊の大隊長だ。

三池淵突撃隊はロックダウンで外出や大隊間の接触が全面禁止され、孤立状態となっていた。唯一の外部との出入りは、資材を運び込むトラックだった。それすらも、ドライバーが積荷を降ろして突撃隊の敷地から出た後で隊員が搬入する形を取り、外部の人との接触を徹底的に遮断していた。

輸送が資材に限られたことで、隊内の食糧事情が急激に悪化。ビタミン源となるキムチが底をつき、隊員はボソボソのトウモロコシ飯だけで飢えをしのぐ状況となり、栄養失調に陥る者も出た。

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食べるものが全くなかったわけではない。突撃隊の上部は、隊員の食生活条件を保障するとして宿舎に小さな売店を設置したが、食べ物がタダでもらえるわけではなく、すべて有料。無給で働く隊員にとっては、絵に描いた餅に過ぎなかった。おそらく、突撃隊幹部がカネ儲けを企んでいたのだろうが、隊員にカネがなくては儲けにならない。

(参考記事:お客から恐喝して荒稼ぎする北朝鮮「恐怖のコンビニ」

そんな中で、各大隊の長に限って外出の許可が出た。突撃隊の敷地から外に出た大隊長らは、隊員の家族が送った仕送りの受け取りを代行した。親切心からではない。これもまた、カネ儲けのためだ。

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の部隊周辺には、外出がままならない兵士の代わりに、仕送りを受け取りに行くブローカーがいるが、手数料はせいぜい送金額の1割だ。脱北して韓国に住む家族からの送金を仲介するブローカーの手数料も送金額の4〜5割。一方で、ある突撃隊の大隊長などは総金額の8割をピンハネし、2割だけを渡すという悪徳ぶりである。

(参考記事:北朝鮮「食い詰めた兵士」に群がるブローカーたち

仕送りがきちんと届いていないことを知り、怒った隊員の家族たちは、突撃隊の指揮部に一斉に抗議。それで逮捕に至ったというわけだ。

山の中腹にある三池淵の建設現場は、非常に過酷なことで悪名高く、充分な食事を与えられないまま長時間労働を強いられた挙げ句、病死する人もいる。そのため、行き先を告げられないまま三池淵の現場に連れて行かれそうになった人たちが、一斉に逃げ出す事件も起きている。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし我先に逃げ出す北朝鮮の人々