北朝鮮と国境を接する中国・吉林省で新型コロナウイルスの感染者が急増する中、北朝鮮当局は、国境地域の各都市に対して封鎖令(ロックダウン)を乱発している。
両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)と三池淵(サムジヨン)は先月29日から、西隣の慈江道(チャガンド)の慈城(チャソン)と満浦(マンポ)では今月3日から、ロックダウンが実施されている。満浦でのロックダウン実施は、4回目となる。
期間はいずれも30日間だが、当局は市民に巣ごもり用の食料を確保する時間を与えないまま、突然封鎖令を発動することから、多くの人が飢えに苦しんでいる。生き残るために密輸や脱北を敢行し、命を落とす人も相次いでいる。
(参考記事:北朝鮮兵は弾倉が空になるまで撃ち続けた…射殺された「ある恋人たち」の悲劇)日々の糧にも事欠く絶望的な状況の中で迎えた今年の旧正月(12日)は、いかなるものか。
両江道のデイリーNK内部情報筋によると、昨年の旧正月(1月25日)は、コロナで国境が封鎖される直前だったために、自由に外出できて、市場で購入した食材で、先祖を祀る祭祀(チェサ)のお供えにするごちそうを作ることができた。ところが、今年は状況が一変した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「生きている人の口に入る食べ物の調達すら困難で、鳥かごの中に閉じ込められたような状態なのに、亡くなった両親の祭祀用のごちそうなど考えられない」(情報筋)
祭祀を非常に大切にする北朝鮮の人々。旧正月ではなく、ロックダウンされていなかった新暦の正月に祭祀を行った人は、親に顔向けができると安堵しているという。
情報筋は、恵山で長年商売を営んでいた50代のチャンさんの例を挙げた。例年なら、祭祀用に果物や餅を買い求めるが、今年はそれをあきらめ、代わりに家族に食べさせるの料理を作ったという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「今年は年始回りもできず、家族は家で時間を送っている。市場も閉鎖され、送達奉仕(デリバリー)もすべて絶たれた。市内は死んだように静まり返った旧正月を迎えている」(チャンさん)
(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】突然のロックダウンで生活困窮、餓死者も)今年は、干菓子、トウモロコシ麺、水をお供えして祭祀を済ませることにしたという、慈江道の満浦在住のチョさん(30代)は、「こんなに急にロックダウンされると知っていたなら、お供えにするごちそうの食材をあらかじめ買っておくべきだった」と悔やんだ。
チョさんの夫は軍官(将校)で、3月末まで続く冬季訓練に駆り出されている。例年なら、旧正月の時期だけ帰宅を許されるが、今年はロックダウンのせいで移動ができず、チョさんと幼い息子2人が寂しい旧正月を行っている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面旧正月には、徳談(新年の祝福の言葉)を交わし合うものだが、今年はこんな声をかけてお互いを励ましているという。
「切り詰めるだけ切り詰めて、今あるもの(食べ物)だけで、国が封鎖を解くまで耐え抜こう」
「今生きている人だけでも生き抜こう」