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北朝鮮の最高人民会議常任委員会は昨年12月4日の第14期第12回総会で、「反動的思想・文化排撃法」を採択した。

デイリーNK内部情報筋は最近、朝鮮労働党の平安南道(ピョンナンナムド)委員会の宣伝秘書が行った同法に関する講演会に参加。「海外のラジオ聴取については番組内容の如何を問わず、敵対(国)の放送を聞くことそのものが違法行為だとの説明があった」と伝えた。

北朝鮮の漁師の間では、韓国の公共放送KBSの「気象通報」が正確な気象情報を伝えてくれる「命綱」だとしてよく聞かれているとされるが、今回示された法の解釈では、それすらも違法ということになる。

デイリーNKが入手した同法の説明資料によれば、韓流文化コンテンツの視聴、流布などが違反行為として挙げられているが、その他にも、下記のような条項が設けられている。

(参考記事:「韓流ドラマ見て死刑」連発が懸念される北朝鮮・韓流取締法の中身

今回取り上げるのは以下のような条項だ。

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「国が上映または発行、閲覧を中止したわが国(北朝鮮)の映画や録画物、編集物、図書、図画などを流布」
「該当するものを視聴または保管した者は1万北朝鮮ウォン(約170円)から5万北朝鮮ウォン(約850円)の罰金を課す」

北朝鮮国内で、国営の出版社や映画製作所、テレビ局などが制作したコンテンツであっても、体制の維持に悪影響を与えると判断されたものは、上映や視聴が禁止されたり、一部分がカットされたりしてきた。今回の法律ではそれを明文化し、罰則を規定している。

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ただし、デイリーNKが入手した北朝鮮国内で発行された資料には、禁止された国内製コンテンツの名前は記載されていない。そこで、具体例について内部情報筋に問い合わせた。まず挙げられたのは禹仁姫(ウ・イニ)出演の映画だ。

有名女優だった彼女は金正日総書記の愛人だった。しかし、そのことが父の金日成主席にバレることを恐れた金正日氏は、彼女を残忍な方法で処刑し、その光景を他の芸能人に「見学」させ、恐怖で口封じを行った。

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次に情報筋が挙げたのは、申相玉(シン・サンオク)監督の作品だ。韓国の有名監督だったが、1978年に夫人で有名女優の崔銀姫(チェ・ウニ)氏と共に北朝鮮に拉致され、怪獣映画『プルガサリ』の監督を務めるなど、7本の映画製作に関わったが、1986年に映画祭で訪れていたウィーンの米国大使館に駆け込み、脱北に成功した。二人の拉致を指示したのは、北朝鮮一の映画マニアだった金正日氏だ。

怪獣映画『プルガサリ』のトレーラー

また『不滅の歴史』や『不滅の嚮導』など、金日成氏や金正日氏の活動を描いた作品は以前から徹底した管理の下に置かれ、視聴は当局から承認を受けた上映会、国営テレビなどに限られ、ソフトの個人所有、コピー、流布は禁じられていた。これに今回の法律も適用されるものと思われる。

一方、朝鮮中央テレビなどで放送された外国の映画は、当然のことながら当局の許可を得て放送されたものだが、これを録画してUSBなどに保存、視聴する行為も処罰の対象となる。コンテンツそのものは許可されたものでも、当局がコントロールしきれないプライベート空間でのコンテンツ消費は認めないということだ。ただ、北朝鮮の国営企業が販売している、国内外の映画のDVDの扱いについては不明だ。

(参考記事:北朝鮮で大ヒット!インド映画「バーフバリ」に夢中になる平壌市民

さらに説明資料は「違法に携帯電話のOSをインストールした場合は処罰する」「不順出版宣伝物遮断プログラムをインストールしていない携帯電話を使用した場合は5万北朝鮮ウォン(約850円)から10万北朝鮮ウォン(約1700円)の罰金を課す」としている。

これは文字通り、コピーされた韓流のソフトが再生できないようにするプログラムの無効化に対処するものと思われる。

(参考記事:北朝鮮の恐怖政治を骨抜きにする「韓流見放題ソフト」

ただでさえ娯楽が少ない北朝鮮で、広く親しまれてきた韓流を含む様々な文化コンテンツの消費を、異常なほどに制限した今回の法律。金正恩政権がエンタテインメントの影響力をいかに恐れているかの表れと言えようが、果たして実効性があるものなのか、今後の運用状況が注目される。