今に至るまで国内での新型コロナウイルスの感染者の発生を認めていない北朝鮮。その一方で、コロナ感染拡大を防ぐとして、各地で封鎖令(ロックダウン)を頻繁に発令している。
期間や強度には違いがあるものの、ただでさえ苦しかった市民生活をさらに困窮させる結果を招いている。封鎖令が解除されても、他地域への移動統制は継続され、生活へのダメージがさらに広がっている。
(参考記事:北朝鮮で拡大するロックダウン、慈江道全域に封鎖令)移動統制が続いていると伝えた、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、都市部より地方の食糧事情が深刻さを増していると伝えた。
「(新義州<シニジュ>)市内も生活が苦しいのは同じだが、食べ物は手に入る。しかし地方では事情が異なる。食べていけるようにしてくれなければならないのに、移動を禁止しているので、飢えに苦しむ人々が出ている」
都市部では、商店や市内の近距離の移動のための交通機関があるため、食糧の入手がまだ可能だが、地方では基本的なインフラが整っていない上に、昨年の台風などで穀物の生産高が減少し、深刻な食糧難の兆しが現れつつあるというのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋は、現地の深刻な食糧事情を伝えた。生き残るために移動統制の網をかいくぐって夜に徒歩で近郊の農村にコメの買い出しに出る人々がが増えたことで、当局は先月20日、さらに移動統制を強化した。
しかし、「コチェビ(ホームレス、ストリート・チルドレン)が増えて、貧しい人々は家から出られずに餓死している」「まだ耕していない田畑に出て落ち穂拾いをしている」(情報筋)現状を知っている地元の党委員会や安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)は、あえて見て見ぬ振りをして、積極的に取り締まろうとはしていなかったという。
しかし、個人所有の車両が農村からコメを運び出しているという報告を受けた朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)に報告した。食糧不足に困っているのは軍も同じだ。コメが次々と運び出されるのを放置すれば、軍糧米(軍向けの食糧)が確保できず、ただでさえ飢えに苦しんでいる兵士たちが、さらなる困窮に追い込まれるからだ。
(参考記事:協同農場を「占領」した北朝鮮軍の危機的状況)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
中央は、咸鏡北道のみならず全国的に車両の移動を強力に統制するよう指示し、コメを積んだ車は姿を消した。
食べ物を求めてさまよっているうちに、国境地帯に近づいて射殺されてしまう人もいると、情報筋は伝えている。
(参考記事:北朝鮮軍、国境地帯で密入国者を射殺し遺体を放置)