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中国との国境に面した北朝鮮・慈江道(チャガンド)の渭原(ウィウォン)郡に対して16日、1ヶ月間の封鎖令(ロックダウン)が下された。新型コロナウイルス感染を疑わせる症状を見せ、死亡する人が相次いだことによるものだ。

その範囲が広がり、慈江道(チャガンド)全体が封鎖される事態へと発展した。

(参考記事:北朝鮮でロックダウン相次ぐ…4万人に外出禁止令

現地のデイリーNK内部情報筋は、全道封鎖に至ったいきさつを次のように説明した。

きっかけを作ったのは、現地に駐屯する国境警備隊の副小隊長だという。

彼は先月末から、2人の部下を連れて160キロほど内陸にある松源(ソンウォン)郡に頻繁に通っていた。松源と言えば、トウガラシの産地として名高いところだが、保衛部(秘密警察)幹部にキムジャン(越冬用のキムチ大量漬け込み)に使うトウガラシを届けるというのがその理由だ。要求されたのか、付け届けとしてなのかは不明だが、上官は黙認していた。

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副小隊長は、松源郡の中心地にある協同農場の幹部の息子と知り合いで、そのコネを使ってトウガラシを調達、保衛部幹部に届ける一方で、一部をちょろまかして市場で売り払い、利益を得ていた。

そんな作業を繰り返している最中に渭原郡に封鎖令が下され、部隊が丸ごと隔離されてしまった。副小隊長は、戻ろうにも戻れなくなってしまった。

彼は、高熱を出して死亡した別の2人の隊員と濃厚接触した履歴がある上に、無断で勤務地を離脱しているという扱いになってしまった。同行していた部下2人は、増派され国境警備を担当している暴風軍団に逮捕され、取り調べを受けた。

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逮捕と処罰を恐れた副小隊長は、知り合いの松源郡の外貨稼ぎ事業所の運転手が運転する車に乗り脱走を図った。2人は慈江道各地を転々とし、温泉リゾートがあることで知られる平安南道(ピョンアンナムド)の陽徳(ヤンドク)まで行ってきたという。温泉浴を楽しむ余裕はなかっただろうが。

(参考記事:金正恩印「温泉リゾート」が新型コロナで壊滅的打撃

当局は松源郡を封鎖した上で、21日から慈江道全体に封鎖令を下した。渭原と松源の両郡は、住民の外出すら禁止されているが、道内の他の地域は市・郡内の移動は認められ、他の地域との移動だけ遮断されている状態だ。

気の毒なのは、同じ慈江道の満浦(マンポ)の市民だ。コロナ疑い患者の急増により、先月26日に封鎖令が下され、今月14日になってようやく解除されたというのに、わずか1週間で再び封鎖されることになってしまった。

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(参考記事:北朝鮮国境都市、コロナ封鎖中に100人死亡…餓死者も発生

25日の時点で副小隊長の行方は掴めていない。当局が全国的に移動統制を強化している中で、車を使っての逃走には限界がある。一部ではすでに国境を越えて脱北を図ったのではないかとの説も浮上している。

当局は、軍需工場が密集する慈江道で万が一コロナが蔓延すれば、国防も経済も深刻な打撃を受けると見て、全道の封鎖に踏み切ったと情報筋は見ている。

国境地帯の警備には、暴風軍団に加えて、工兵部隊3個大隊と、425訓練所の装甲車部隊1個大隊、機械化部隊2個大隊が増派された。地域の国境警備隊が丸々隔離されたことで、国境警備に穴があくことを恐れてのものと思われる。

現地の住民は、大量の装甲車が走り回っているのを見て、「戦争でも起きたのではないか」と不安がっているという。