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北朝鮮では貴金属の個人所有、売買、無許可の輸出が厳しく禁じられている。

最近では、合計で150キロ、6億7000万円相当の大量の金塊を中国に密輸していた男女6人のグループが摘発されている。また、58キロの金を密輸していた別の7人も摘発されている。こちらは、金正恩政権の高官の関与が疑われている。

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貴金属を巡る事件が後を絶たないが、今回、開城(ケソン)のデイリーNK内部情報筋が伝えたのは、中央銀行である朝鮮中央銀行の幹部による不正行為だ。

朝鮮中央銀行の貴金属管理局の副局長と、開城支店の副支配人は4年間にわたり、貴金属を中央銀行の定めた価格より安く買い入れ、高値で売り払う方法で私腹を肥やしてきた。

多くの北朝鮮国民が制裁、自然災害、コロナの三重苦で、日々の糧にも事欠く暮らしを強いられている中で、副支配人は開城市内でも10本の指に入るほどの豪邸で暮らし、副局長も平壌の最高級マンションで羽振りの良い暮らしをしていた。

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開城支店の支配人と管理イルクン(幹部)は、かなり前から不正に気づいていた。中央銀行本店への貴金属類の移管をまとめた帳簿と、現金の額が一致しないことに気づき、中央に何度も信訴(不正行為の告発)を行った。

この信訴は、北朝鮮国民が公務員の不正行為を告発する数少なく且つ法に基づいた制度ではあるが、今回のように途中で握りつぶされたり、訴えたことで逆に被害者が報復されたりすることもあり、人脈をたどってうまく上部に伝えるなどの「コツ」が求められる。

実際、支店レベルでいくら信訴を上げても、取り上げられることはなかった。平壌の本店にいる貴金属管理局副局長が握りつぶしていたからだ。

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金正恩党委員長が進める幹部の不正行為摘発キャンペーンのあおりを受けたのか、詳細は不明ながら、先月中旬になってようやく、信訴が中央党(朝鮮労働党中央委員会)のしかるべき部署に取り上げられた。こうなれば動きは速い。

中央党は「清廉潔白に生きるべき銀行のイルクンが、国を騙して国のカネを貪汚したことに対して厳しく処罰せよ」との指示を下した。

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これを受けて国家保衛省(秘密警察)は、幹部2人を即時逮捕し、家宅捜索を行った。その結果、副支配人の家から、壁のタイルの隙間に現金30万ドル(約3132万円)と金塊20個が隠されていたのを発見した。

副支配人、副局長は家族と引き離された上で、それぞれ別の政治犯収容所に収監された。

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北朝鮮庶民にとっては天文学的な額の不正蓄財を行っていたこの事件。話を耳にした開城市民は驚愕すると同時に「犯人らは処刑されなかっただけマシと思うべき」などの反応を示した。

一方で、「これほどの事件なら無条件で銃殺のはずなのに、処罰が少し弱い」との反応を示す市民もいた。量刑に手心が加えられたことを疑っているのだろう。

ちなみに政治犯収容所には、刑期満了後に社会復帰が可能な「革命化区域」と、何があっても絶対に出てこられない「完全統制区域」があり、2人とその家族がどちらに入れられたのかは不明だ。

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