北朝鮮の美女4人「金塊6億円密輸」犯を待つ無残な運命

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北朝鮮の国境地帯に血の雨が降ることになりそうだ。

中国との国境に接した両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市では、国境警備隊の責任保衛指導員(秘密警察)と兵士の2人が、武装したままで川を渡り、脱北する事件が起きた。密輸の発覚を恐れてのことだが、これにより恵山市には封鎖令(ロックダウン)が下された。

3週間もの間、一切の外出が禁じられることになったが、食糧を確保する時間が1時間しか与えられなかったことから、飢えに苦しむ人が続出するなど、市内は大混乱に陥った。

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事の発端となった密輸事件だが、極めて重大なものだったことが明らかになりつつある。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、匿名を要求した両江道の司法幹部の話として、今月16日、密輸グループの一団6人が道の保衛局(秘密警察)に逮捕されたと伝えた。その容疑は、金塊の大量密輸だ。

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40代中盤の美貌の女性4人と、50代の男性2人からなるこのグループは、国境警備隊の中隊の保衛指導員をワイロを渡して抱き込み、数十キロ単位で金塊を密輸していたが、5回目の犯行現場を押さえられ、逮捕された。

逮捕時に、20キロの金塊は既に中国側の手に渡った後だった。密輸した金塊の合計量は154.8キロ、恵山での市場価格で650万ドル(約6億7600万円)に達する。

北朝鮮で貴金属の密売は極めて重大な犯罪だ。刑法附則第6条では「貴金属、有色金色密輸、密売行為の罪状が極めて重い場合には死刑および財産没収刑に処す」と定められている。

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ここまで金属の密輸、密売に厳しい対応をするのは、朝鮮労働党の重要な資金源となるためだが、リスキーながら非常に儲かるとの理由で、手を出す者が後を絶たない。今年7月にも、同じ恵山で58キロの金塊を密輸する事件が摘発されている。

(参考記事:金正恩政権の高官関与か「金塊58キロ密輸で処刑確実」

別の司法機関の関係者によると、今回の事件の容疑者6人は、保衛局拘禁所に勾留され、家族や関係者は12月20日まで隔離措置を受けている。6人は処刑、運が良くても政治犯収容所送りになるだろうと述べた。

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中央は、今回の事態を極めて深刻に見ている。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、国家保衛省(秘密警察)は幹部を現地に派遣し、封鎖令が下されている間に20日間に渡る集中的な検閲(監査)を行った。保衛省は国境警備隊のみならず、両江道の保衛局、安全局(県警本部)の幹部が深く関わり、保衛省単独で解決できる事案ではないと判断し、1号報告(金正恩党委員長への報告)を上げた。

それを受けて朝鮮労働党中央委員会は、今回の密輸を「国家の存亡がかかった深刻な事案」とみなし、「恵山事件」と名付け、事件の対策に当たらせるため、党中央軍事委員会の李炳哲(リ・ビョンチョル)副委員長を恵山に急遽派遣した。

23日に恵山に到着した李炳哲氏は、党の両江道、恵山市委員会の委員長から状況報告を受け、「党、政権機関、軍隊に至るまでカネさえもらえれば国も売り払うほど皆が腐りきっている」と強く批判したという。

また、両江道保衛局長と安全局長との面談では、「両江道の住民の半分を教化所(刑務所)送りにしても、いくらでも革命はできる」と述べたという。

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一方で李炳哲氏が恵山に来る前の週の初め、両江道の党委員長、国境警備強化のため派遣されている朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の暴風軍団(第11軍団)の軍団長、第7軍団の副軍団長の3人が、提議書を金正恩氏に提出した。

その内容は人員の総入れ替えについてのもので、10項目に及ぶ。一つは、既存の部隊を派遣すると、また同様の事件が起こりかねないので、各部隊から優秀な人材を選抜した上で、派遣してほしいというものだ。

また、恵山事件の首謀者のいた国境警備隊の中隊を解散することについて、朝鮮人民軍の党委員会の決定書を受けたいというものだ。

これらの内容はすぐさま金正恩氏に伝えられ、22日に批准された。翌23日、国境警備隊の1個中隊が解散させられ、24日には中隊が所属する大隊そのものが、咸鏡南道(ハムギョンナムド)栄光(ヨングァン)郡に駐屯していた別の大隊と総入れ替えとなった。

新しい人員は24日に列車で現地に到着したが、元々いた人員はその列車に乗せられ、咸鏡南道に送られた。あまりにも急なことで、個人宅に預けておいた私物やカネを受け取る時間すらなかった。

RFAは匿名を要求した両江道の軍関係者の話として、解散させられたのは国境警備隊25旅団4大隊3中隊で、人員は24日午前0時に突然起床させられ、行き先も告げられないまま移動を強いられたと伝えた。

人員の総入れ替えは、地域社会に強い衝撃を与えている。

RFAの住民情報筋は、住民たちは、あまりに突然の異動にショックを受け、抱き合って泣き崩れたと伝えた。商売が絡んでいるからだ。

デイリーNKの内部情報筋によると、部隊の前で店を営み、隊員にツケで品物を売ったり、カネを貸したりしていた人たちは、カネが受け取れなくなり、大損害を被った。人員の大々的な交代がさらに行われると見た人々は、他の部隊にも押しかけ、「カネを返せ」「ツケを払え」と取り付け騒ぎのような状況となっている。

国境警備隊の隊員とグルになって密輸をしていた40代女性は、親しくしていた隊員が急にいなくなったことで、代金と品物を受け取れなくなり、絶望のあまり焼身自殺を図った。

李炳哲氏は、両江道の国境警備隊だけ総入れ替えしただけで問題がすべて解決するわけではないとして、国境地域の部隊全体の総入れ替えについても言及したという。また、国境を渡って逃げる者を一人たりとも出さないのが党の最終的な目標だとして、朝鮮労働党両江道委員会、保衛部、安全部、検察所に対して、住民の取り締まり、掌握、統制事業をより細やかに行うことを指示した。

また、中国キャリアの携帯電話を使う者、送金業者、密輸業者、人身売買加担者、宿泊業者を「危険分子」として、徹底的な監視を行うことも指示した。宿泊業者が含まれたのは、旅行証(国内用パスポート)のない人を宿泊させたり、売春や人身売買と連携したりしていることが問題視されたためだ。

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住民は今回の事件を見守り、「ここまでするとは思わなかった」「本当に殺しにかかってきているのではないか」と不安を口にした。一方で、RFA情報筋は、時間が経てば元通りになるとして、次のように述べた。

「国境をめぐり、ありとあらゆる不正行為がはびこっている現状で、誰が来て国境を守ろうとも、密輸など違法行為を完全に遮断するのは難しいだろう」