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北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は先月28日、「翌年の農作業準備に力量を集中」をいう記事を掲載した。そこには次のようなくだりがある。

国の米びつを任された主人という自覚を持ち立ち上がった咸興市の農業勤労者たちが有機質肥料生産のための原料確保を行っている。

(中略)

自力改善であり穀物増産という観点で農業勤労者たちは《シニャン2》号発酵堆肥、フクポサン肥料に必要な原料確保に皆が立ち上がった。市中の工場、企業所の勤労者たちも積極支援している。

この「フクポサン肥料」とは、泥炭、褐炭にアンモニアを混ぜて作ったものだ。アンモニアは人や動物の糞尿から得られる。つまり、今年もまた北朝鮮の人々を苦しめる「堆肥戦闘」――人糞集めが始まることを意味している。それも、ノルマが昨年より増やされるようなのだ。

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両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、当局が道内の農村に対して「新年の堆肥生産と関連し、堆積場を確保または拡張せよ」と強調していると伝えた。これは、集める人糞の量を増やすことを意味する。

慢性的な肥料不足を補うため、人糞を発行して作る堆肥を肥料の代わりに使っている。年が明けるとすぐに「堆肥戦闘」が始まり、課せられたノルマの分だけ人糞を集める。

課せられるノルマは人によって異なるが、数トンに達することも。達成できなければ処罰されかねないので、他人の家の便所から人糞を盗み出したり、市場で購入したり、ブローカーにカネを払い、人糞を納めたことにして証明書を発行してもらったりなど、国全体が人糞を巡って大騒ぎとなる。

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(参考記事:北朝鮮「人糞が足りなければ刑務所行き」

工場での化学肥料、有機質肥料の増産で、今年のノルマの量は減らされ喜びの声があがっていたのだが、新型コロナウイルス対策で国境が閉鎖され、貿易を止められ、中国からの物量確保ができなくなったことから、ノルマの量が増やされるということだ。

(参考記事:北朝鮮で新年恒例の「人糞集め」ノルマ減り喜びの声

以前は、とりあえず量さえ満たせばよかったのだが、今年は「質を徹底的に保証せよ」などと言い出した。良質の人糞とは具体的に何を差すか不明だが、かさ増しのために異物を混ぜるなということなのだろう。

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情報筋の伝える住民の反応は様々だ。2010年代初じめと比較して、収穫量が増えたと考えている人たちは、当局の決定に積極的に従っている。一方で「国が肥料生産がうまく行っていると宣伝しているのに、堆肥のノルマが減らないのは矛盾している」と不満を口にする人もいる。

北朝鮮の国営メディアは、金正恩党委員長が参加して今年5月に竣工式が行われた、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)燐酸肥料工場のことを大々的に宣伝したが、実際は設備も原料も搬入されておらず、肥料生産ができる状態ではない。

(参考記事:死亡説の金正恩「復活ショー」の知られざる舞台裏

別のデイリーNK情報筋は先月、中国にいる貿易指導員が、この工場で必要となる肥料生産設備や原料の2割を確保したが、国境が閉鎖されているため、すぐには北朝鮮に輸出できず、中国の国境都市で保管されている状態だと伝えた。予定量の半分を確保した時点で、一度に通関させる予定だが、中国の業者から、代金として貴金属類を格安で引き渡すよう要求され、交渉が難航している。