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かつては「文盲」と呼ばれた非識字。ユネスコの2015年の統計によると、識字率の世界平均は86.3%だという。アフリカの低開発国で低く、ヨーロッパ、南北アメリカ、東アジアは非常に高い傾向にあるが、世界最高の識字率を誇っているのが北朝鮮であるということは、あまり知られていない。その数値は100%に達する。2500万人の北朝鮮国民のうち、文字の読み書きができない人は誰ひとりいないということになる。

ところが、北朝鮮当局は最近、非識字者に対する対策を行うように指示した。識字率100%であるはずの国で、一体どういうことなのだろうか。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、中央の指示に基づき、文字の読み書きができない住民が多い件について今月から全国的な調査が始まったと伝えた。対象は工場、企業所、国家機関、協同農場、朝鮮人民軍などすべての機関だ。

文字の読み書きができない人が多い理由は次のようなものだ。

「住民の中には、苦難の行軍のころに生計のために様々な活動をしていて、学校に通えないまま社会に出てしまった人が多い」

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苦難の行軍とは、1990年代後半に北朝鮮を襲った大飢饉のことだ。食糧配給が止まり、何十万とも言われる餓死者が発生した。ある者は市場で物を売り、またある者は山を切り開いて畑を耕し、生き抜こうと必死だった。学校に通うべき年齢の子どもも例外ではなかった。

(参考記事:【崩壊した北朝鮮の教育(2)】貧困層の子どもは生きるために市場に行く

また、北朝鮮は「無償教育」を誇っているが、現実には教科書、制服から共同で使うパソコンに至るまで費用を徴収され、負担できなければ学校から追い出されることもある。そんな状況で、読み書きすらできない人が量産されてしまったのだ。

(参考記事:北朝鮮、無償教育のはずが教育費払えず退学続出の謎

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北朝鮮のすべての機関では、毎週土曜日に生活総和が行われノートも提出させられるのだが、誰かに代筆してもらうなど、何らかの方法で乗り切ってきたのだろう。

当局はすべての機関、人民班(町内会)を含めて、読み書きのできない人がいないか探し出して報告し、識字教育を行っている。仕事が終わった後の2時間、毎日勉強させるのだが、勉強を嫌がる人が多く、教育担当者は苦労が絶えないという。頻繁に行われる思想教育のせいなのか、「教育」と聞くだけで拒否感を抱く人が少なくないのかもしれない。

(参考記事:北朝鮮の思想教育、出席率悪すぎで関係者やきもき

中央は、読み書きのできない人の多い企業、機関の幹部に対しては責任を追求すると警告している。

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平安南道(ピョンアンナムド)の別の情報筋は、朝鮮人民軍でも同様の命令が下され、11月中に兵士とその家族、軍務員(軍で働く民間人)を対象に、読み書きができるか全数調査を行っている。中でも、1990年代以降に生まれて、苦難の行軍で学校に通えなかった兵士を集中的に調べている。

国際社会の制裁、自然災害、新型コロナウイルスの三重苦に苦しめられている現状で、党の要求どおりに識字教育を進めるのは難しいだろうと、情報筋は見ている。