金正恩印「温泉リゾート」が新型コロナで壊滅的打撃

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北朝鮮・平安南道(ピョンアンナムド)の山あいの町、陽徳(ヤンドク)。古くから温泉地として有名で、朝鮮戦争後にはソ連式のサナトリウムが建設されたが、金正恩党委員長はここを再開発してホテル、スキー場、乗馬場を併設した一大スパリゾート陽徳温泉文化休養地を建設する計画をぶち上げた。

金正恩氏は、建設中の現場を7回も訪れ、竣工式にも参加してテープカットを行うなど、並々ならぬ関心を寄せていた。今年1月のオープン当初は賑わいを見せていたが、わずか1ヶ月ほどで閑古鳥が鳴く状況となっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が詳細を報じている。

(参考記事:金正恩氏、温泉リゾート地の竣工式に参加

平安南道(ピョンアンナムド)のある住民によると、先月末までは、平壌や地方都市の人々が数百人単位でやってきて温泉、レストラン、ホテルは非常に賑わっていたという。

「彼らのほとんどが、(労働)党の配慮で陽徳温泉優待券を持ってやって来た抗日闘志の家族や戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)、家族でほとんど無料同然の国定価格で温泉を楽しんだ」(住民)

しかし、今では露天温泉、ゴルフ場、乗馬場には客が一人もいない状況だという。

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国営メディアの宣伝が功を奏してか、北朝鮮国民の多くが陽徳に関心を持つようになったが、温泉の入場料は、飲み物代を含めて1日10ドル(約1110円)。それだけでもかなりの負担になるのに、ホテルに宿泊しレストランで食事をするとなればさらに費用がかかる。この住民は少なくとも100ドル(約1万1100円)はかかると述べている。

情報筋は、陽徳にやってきた多くの人が激安価格のツアーで来たと証言しているが、RFAは平壌在住の華僑の話として、市内の人民班(町内会)では陽徳に行く2泊3日のツアーに半ば強制的に参加させられていると報じている。

(参考記事:金正恩印「温泉ツアー」の責め苦に悲鳴上げる北朝鮮の庶民

平安北道(ピョンアンブクト)の別の住民は、この温泉リゾートについて最初から一般国民にリゾート地を提供するのが目的ではなかったとして、「最高尊厳(金正恩氏)が陽徳温泉の建設現場を複数回視察し、竣工式でテープカットするほど関心を見せたのは、外国人観光客を誘致し外貨を稼ごうという意図だった」と述べた。

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ところが、中国・武漢を中心に感染が広がる新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために、先月22日から外国人観光客の受け入れを取りやめてしまった。

「新型コロナウイルス事態で外国人観光客が遮断され、陽徳温泉施設は開店休業状態となった。派手に建設された陽徳温泉の施設は、結局少数の金持ちのためだけの施設となり、営業不振は不可避だ」(住民)

(参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

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感染症対策どころか、通常の医療体制すら劣悪極まりない北朝鮮のことだ。万が一、新型コロナウイルスが入ってきたとしたらひとたまりもない。

(参考記事:「わが国に入ってきたら終わり」北朝鮮国民、新型肺炎に震撼

その一方でこの住民は、「伝染病がなくなって外国人観光が再開されれば、外貨収入は相当なものになる」と期待をのぞかせた。しかし同時に、多くの人が訪れるようになったところで、地元の住民にとっては「絵に描いた餅」に過ぎず、不満をいだいていると伝えた。

「当局が陽徳温泉地区を牛耳り、外貨稼ぎにのみ力を入れ、陽徳の住民は故郷の土地を当局に奪われたと言って、住民を無視して外貨稼ぎにばかり気を使っている当局を恨んでいる」(住民)