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 ※この記事には、自殺に関する具体的な記述が含まれています。

北朝鮮で自殺は禁止されている。有名人ならなおさらのことだ。国外に知られているのは、金日成主席の甥で、朝鮮労働党中央委員会政治局委員候補、国家計画委員長などを務めた金達玄(キム・ダルヒョン)氏くらいだ。自殺は国と最高指導者に対する裏切り行為と見なされ、政治的事件となり、遺族にも累が及ぶことがある。

「将軍福」、つまり金日成氏、金正日氏という「世界で最高の指導者」のもとで暮らしているのに、自ら命を経つのは、裏切り行為ということだ。党、祖国、首領、人民のために命を捧げることは「革命家の高貴な人生」だが、自殺は「自分の政治的生命を汚し、育ててくれた党と首領への恩知らずで裏切る行為」と罵倒される。

そんな社会的雰囲気のため、北朝鮮国民はいくら苦しくても自殺するのは難しい。自殺者は反逆者であり、自死者の遺族は、反逆者扱いされ、政治的、社会的に抹殺される。そんな空気は、1990年代半ばの大飢饉「苦難の行軍」のころまで続いていた。

1990年代中頃、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)にある鴨緑江旅館(ホテル)の担当保衛指導員(秘密警察)が、自ら命を断つ事件が起きた。貿易機関の関係者とグルになり、ホテルを利用する外国人相手に商売をして荒稼ぎしていたのが発覚し、保衛部(秘密警察)に逮捕された。

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新義州市保衛部は、彼らが中国を通じて韓国諜報機関と内通していないか厳しく取り調べた。保衛指導員は過酷な拷問を受けたが、自分を口を開ければ多くの人に類が及ぶことを恐れ、舌を噛んで自ら命を絶った。

妻と子どもは、周りの人々から「反逆者の家庭」と後ろ指を指されるようになり、追われるように新義州から姿を消した。

家族から自死者を出すと、出身成分にも悪影響を受ける。

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(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

1990年初頭、平安北道の宣川(ソンチョン)にある4.25訓練所の軍医所で勤務していた軍医のリ氏の妻が自ら命を絶った。夫婦は、北朝鮮では「赤い貴族」とも言われる抗日パルチザンの子孫だった。

二人は、両家の利害関係により政略結婚させられ、当初から結婚生活は破綻していた。夫リ氏は、妻リュ氏を「他に男がいる」と詰り、服を破くなどの異常行動を行っていた。夫の暴力に耐えかねた妻は、実家の両親に知らせたが、両親は娘の安全より、世間体を考え、結婚生活を続けるように強いた。

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絶望した妻は、抗不安剤のジアゼパムを50錠飲んで自ら命を絶った。両家は、自殺ではなく病死に偽装した。家族に自死者がいる記録が残れば、社会的、政治的に問題となり、出世ができなくなるからだ。夫は、軍医所の課長に昇進した。

事件について知る周囲の人々は、妻に同情しつつ「自殺がなぜ病死扱いになるのか理解できない」と疑問を呈した。また、夫に対しては「いい家の出なら、妻を死なせても出世する」と露骨な非難が浴びせかけられた。

自殺が絶対悪とされた状況が変化し始めたのは、1990年代中盤だ。経済難、飢饉で自殺者が増加、偏見や無理解が変わり始めた。国からの食糧配給が途絶え、暮らし向きが悪くなり、自殺の見方が自然に変わり始めたと言えよう。

最も自殺者が多いのは、60歳前半だ。一人暮らしの高齢者が自殺するケースがある一方で、子どもがいても貧困から面倒を見てもらえず、あるいは経済的に余裕があっても放置され、悲観して自ら命を絶つというものだ。

平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)では、60代前半の老人が首吊り自殺した。彼には5人の息子がいたが、誰も父親の面倒を見ようとしなかったのだ。落胆した彼は、「指先が擦れるほど懸命に働いて5人の子どもを育てたのに、年老いて誰も面倒を見てくれないのなら死ぬしかない」と遺書を残して、自ら命を絶った。

人々は「どれほど苦しかっただろうか」「恩知らず」と子どもを激しく非難し、父親に同情した。しかし、以前とは異なり、「(自殺によって)子どもの将来を棒に振らせる」と言った批判の声は影を潜めた。同様の事件が増え、子どもなど必要ない、カネを稼いでいい暮らしをして、それができなければ薬を飲んで死ぬのが幸せという考えが老人の間で広がってしまった。

社会的認識は変わったが、当局は相変わらず、自殺者を反逆者、裏切り者と罵倒している。しかし、北朝鮮国民はそんなプロパガンダには耳を貸さなくなっている。このような変化は、当局のフェイクニュースや偽善には騙されまいという心理が働いているためだろう。

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