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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市に今月2日、封鎖令が突如として下され、一切の外出が禁止されてしまった。国境警備隊の責任保衛指導員(秘密警察)と兵士の2人が、密輸の発覚を恐れ、武装したままで川を渡り、脱北する事件が起きたことによるものだ。

(参考記事:北朝鮮で特殊部隊と国境警備隊の衝突続く…「発砲」寸前の事態に

当局は当日の午前9時に「午前10時までに食糧を購入せよ」との指示を下した。今後、20日間外出が禁止されるため、その分の食べ物を買い込めということだ。市民は市場に殺到、コメ価格が急騰するなど、大混乱となった。

しかし、外出はたった1時間しか許されず、食糧確保に失敗した人が続出。これに対して当局は、コメの配給を行うことにしたが、これがまた新たな不満を呼んでいる。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党恵山市委員会は6日、市内の各世帯にコメ10キロを配給することにした。

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「米騒動」により、先月21日の時点では1キロ4800北朝鮮ウォン(約58円)で売られていたコメが、2倍以上に急騰した。そんな状況でタダでコメがもらえ、一息つけると多くの市民が思ったろうが、それはぬか喜びへと変わった。

ただでの配給ではなく、1キロ3700北朝鮮ウォン(約44円)の有料販売だったからだ。市当局の資金が枯渇していることがうかがえる現象だ。

極貧生活を強いられている人に限っては、2キロを追加で配給したが、10キロでも12キロでも必要な量には全く足りない。

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北朝鮮では、年齢や職業に基づいて配給量が細かく決められているが、一般的な穀物の配給量は1日546グラムとなっている。だが実際には、もらえたとしても450グラム止まりが普通だ。これで計算すると、4人家族なら20日間で穀物が36キロ必要という計算になる。今回配給された量では、必要量の3分の1にも満たない。

家族の多い家庭や、食糧の確保ができなかった家庭は、今後20日間、耐乏生活を強いられることになる。

市当局は今年5月、コロナ対策として市内の市場を閉鎖する措置を取ったが、市民の激しい反発に恐れをなしたのか、わずか数日で再開した。今回の封鎖令でも、市民から反発が起こることを予想し、コメの配給を決めたものと思われるが、むしろ不満を煽ってしまったようだ。

(参考記事:コロナ対策の市場閉鎖に北朝鮮国民が猛反発「権力機関も恐れない」

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「コメ数キロの配給で、膨らむばかりの住民の不満を払拭するのは難しいだろう」(情報筋)

恵山市民はただでさえ、新型コロナウイルスの国内流入防止のために、「地場産業」である密輸が完全にブロックされ、他の地方との交通も遮断、物流が滞り苦しい生活を強いられてきた。今回の封鎖令で「ますます暮らしが苦しくなる」(市民)と不安が広がっている。

ちなみに、米ドルや中国人民元が一般的に流通している北朝鮮だが、当局は今回のコメの販売で、外貨での支払いを禁じたとのことだ。外為市場の動きが止まっていることに加え、「また外貨をせびり取ろうとしている」などとと不満が広がることを恐れたものと思われる。

(参考記事:北朝鮮、財政難打開の秘策「公債発行」が中断