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韓国の海洋水産省所属の漁業指導船に乗り組んでいた男性が24日、北朝鮮軍に銃撃され死亡した事件で、北朝鮮の金正恩党委員長は謝罪の意を表明した。

軍事的緊張状態が続くこの海域では、1999年6月と2002年6月の韓国軍と北朝鮮軍の交戦、2010年3月の韓国の哨戒艦撃沈、同年11月の韓国領の大延坪島(テヨンピョンド)砲撃など、衝突が繰り返されてきた。

(参考記事:「失望させ申し訳ない」金正恩氏、韓国人射殺で謝罪

北朝鮮が国境を接するもう一つの国、中国。両国は「血で固めた友誼」と形容されるほどの友好関係にあるが、それでも様々なトラブルが起きている。デイリーNKの対北朝鮮情報筋が、今年に入って起きた中朝間のいざこざについて伝えている。

今年7月末、北朝鮮と中国を分かつ鴨緑江の河口で、2〜30メートルクラスの中国漁船4隻が、北朝鮮国境警備隊の52挺隊所属の警備艇に船体をぶつける事故が起きた。この事故で警備艇は転覆、乗員7人が海に投げ出されその一部が行方不明になった。背景にあるのは、双方の癒着関係だ。

北朝鮮の国境警備隊は中国漁船に対し、自国の領海内での違法操業を見逃す代わりに、1000元(約1万5000円)から1万元(約15万円)のワイロを要求し続けていた。応じなれば水揚げはすべて没収。中国漁船もカネを払って楽に漁をしたほうがいいと考え、大人しく払ってきた。国境警備隊は、そのカネを国から要求された上納金にあててきた。

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ところが、今年の初めから新型コロナウイルスの影響で漁船が姿を消し、国境警備隊は数ヶ月もの間「水揚げ」がゼロになってしまった。半年以上経ってようやく操業を再開したが中国漁船に対し、「今までのツケを払え」と厚かましい要求を突きつけたという。そこで、漁船が力を合わせて警備艇を転覆させたというわけだ。

北朝鮮は、軍隊の船が民間の漁船にコテンパンにやられたことで恥をかかされた形となり、沈黙していた。一方の中国も、事件の発生を認めれば自国漁船の違法操業を認めることになるため、密かに処理しようとした。

そして8月11日、顔に泥を塗られた北朝鮮の国境警備隊が復讐に乗り出した。新義州より遥か南にある、黄海南道(ファンヘナムド)海州(ヘジュ)や甕津(オンジン)沖で違法操業していた中国漁船10隻のうち、1隻をを銃撃、乗員3人を死亡させたのだ。ちなみにこの海域は、上述の韓国人射殺事件が起きたところだ。情報筋は、この攻撃を「体当たり転覆事件」への報復と見ている。

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ただでさえプライドの高い北朝鮮の兵士が、民間人にやられて大人しく黙っていれば沽券に関わるのだろう。

(参考記事:北朝鮮の特殊部隊と国境警備隊が大乱闘、死傷者多数

以前から、国境地帯で乱暴狼藉を働いてきた北朝鮮の兵士たちだが、コロナのせいで以前にもまして生活が困窮し、中国漁船までをも襲撃しているもようで、中国人は「海賊」と呼んで恐れている。情報筋が語ったのは、こんな身の毛がよだつ話だ。

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「6月に(鴨緑江河口の)丹東沖で無人の漁船1隻が発見されたが、船内には人の耳と思しき肉片と血痕が残っていたらしい。中国政府が調査に乗り出し、聞き込みを行った結果、朝鮮の海岸警備隊の仕業とわかったが、解決するすべがなく結局あいまいに終わってしまった」

さすがに座視できないと思ったようで、最近になって両国は再発防止策について合意した。別の中国の外交筋は、中国側が自国民保護のため交渉を呼びかけ、今月10日に合意に達したと明らかにした。

北朝鮮側は、違法操業の漁船を見つけても銃撃は行わず口頭や石を投げたりして警告を発し、追い払うものとし、もし中国人に対して無差別、無分別に銃撃して人的被害が発生した場合、北朝鮮から輸入する商品の関税を3倍にする、被害者には120万元(約1855万円)の賠償金を支払うというものだ。

合意に基づき、北朝鮮の警備艇は男性の拳ほどの大きさの石を大量に積んで出港するようになった。この合意は、中朝国境全体に適用されているようだ。今月21日、中国吉林省の長白朝鮮族自治県で、中国人男性2人が牛に水を飲ませようと国境を流れる鴨緑江の河原に降りた。

北朝鮮は中国に対し、国境に人を近づけるな、違反者は銃撃するとの警告文を発し、実際に違反者を射殺している。ところが今回は、「帰れ」と口頭で警告するだけだった。

(参考記事:北朝鮮軍、コロナ対策で警告通り違反者を射殺

合意内容は翌11日に国境警備隊の上部機関である国家保衛省(秘密警察)と朝鮮人民軍(北朝鮮軍)総参謀部の命令として現場に伝えられ、中国から北朝鮮にやって来ようとする人がいても射撃は自粛せよとの命令も同時に下された。しかし、北朝鮮の兵士たちは非常に不満を抱いているようだ。

「ただでさえ足の速い中国漁船に、石を満載して遅くなった警備艇から石を投げても当たらない」「当たったところで無意味だ」「任務遂行を諦めろと言われたのも同然だ」――といったものだ。中国の漁船がこれ見よがしに違法操業をすることは火を見るより明らかだ。兵士たちは「結局はわれわれ(北朝鮮)がまた中国に頭を下げた」などと悔しがっているとのことだ。