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北朝鮮の庶民が、牛肉を口にすることはめったにない。牛は食べるものではなく、重要な生産手段だからだ。

当局は、個人の牛の所有、屠畜、販売を禁じている。違反者は単なる経済犯ではなく政治犯扱いとなる。許可なく食べたり販売したりして銃殺される人もいたほどだ。

(参考記事:北朝鮮では「牛肉を食べたら銃殺」だった

しかし、規制は近年に入って緩和される傾向にあったが、ここに来て再び強化されることになった。

デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によると、金正恩党委員長の「牛は国家機関の承認なくして個人が保有、処理できるものではないと正確に知らしめよ」との方針に基づき、中央党(朝鮮労働党中央委員会)は、党の各支部、行政機関、司法機関に対して「農耕用の牛を個人が私的に所有、密売、屠畜する行為を徹底敵に管理、統制せよ」との指示を今月11日に下した。

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朝鮮労働党農業部と内閣農業省は、過去数年の間に生まれた子牛を国に登録せずに育てた上で、屠畜、密売する行為が露骨になっているとの報告が全国から相次いだことで、このような状況を是正すべきだと提議書を提出した。

協同農場の農地を家族ごとに任せ、収穫量に応じて利益を配るという「圃田丹東責任制」の導入以降、このようなことが増えたとのことだ。農場から農地とともに牛も譲渡されたことで、個人が勝手に所有して処分してもいいと思い込んでいる人も少なくないようだ。

しかし当局は、農業生産量が上がらなったことから、牛の管理を徹底する必要性を感じたようだ。

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指示には、協同農場と牧場は牛の頭数を道、市、郡の農村経営委員会に正確に登録し、国家機関は牛の管理を徹底せよ、違反行為は国家財産の侵害と見なし処罰する――とある。

また、働けなくなった牛を屠畜する前に必ず獣医師の診断を受けさせ、農場、牧場、国家機関の同意を得ねばならず、個人が勝手に行ってはならないとしている。

指示に合わせて、刑罰も強化された。牛の密売で摘発された場合の量刑は5年以下の教化刑(懲役刑)、今回からは4頭までは無期懲役、それ以上は死刑というものだったが、10月1日からは7年以上の教化刑、4頭以上は死刑となった。

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今後しばらく、牛肉は市場から姿を消しそうだが、ほとぼりが冷めれば戻ってくるだろう。この手の指示は、ワイロによって骨抜きされるのが北朝鮮の常だからだ。

(参考記事:北朝鮮が密輸の取り締まりを強化。結果は「ワイロ高くなるだけ」

農民からは不安の声が上がっている。個人が丁寧に管理していた牛を農場に戻すとなれば、まともな管理が行われず、畑仕事に使えなくなるという理由からだ。

一方で、一部牧場からは不満の声も出ている。自分たちの牧場で育てている牛は、すべて9号製品(金正恩氏向け)として納品したり、中央党が持っていったりしているのに、自分たちも方針の対象になったことが気に入らないようだ。

これを読むと、庶民に対しては「牛を食べるな」と言っている金正恩氏や高級幹部が、特別に飼育された牛を食べていることがわかる。これでは示しがつかないだろう。