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北朝鮮北部、両江道(リャンガンド)の金正淑(キムジョンスク)郡と金亨稷(キムヒョンジク)郡。前者は金日成主席の夫人、後者は父の名前を地名として戴く革命の聖地のひとつだ。その割には優遇されておらず、住民は昔から苦しい生活を強いられている。

全域が山岳地帯の両江道の中では、高度が低く、稲作も可能ではあるが、農地は非常に少なく、産業といえば林業と鉱業が中心だ。人口は5万人前後と少なく、豆満江の対岸の中国吉林省長白朝鮮族自治県も人口希薄地帯で、密輸をしたとしても小規模にならざるを得ない。さらに、新型コロナウイルス対策で国境警備が今まで以上に強化され、密輸そのものが困難な状況となっている。

そんな中で、両郡の人々がようやく見つけた収入源が、朝鮮労働党により収奪されていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

道党(朝鮮労働党両江道委員会)は、個人で農業をしている人々に対して「収穫したスイカの半分以上を国に収めよ」との命令を下した。孤児やコチェビ(ストリート・チルドレン)を収容する初等学院、中等学院に届けるのだという。

これらの施設に対しては、金正恩党委員長から改善の命令が出されている。その「実績作り」のために、スイカを配ろうというものだろう。ただ、横流しがはびこっている実情を考えると、スイカが本当に子どもたちのところに届くか疑問を抱かざるを得ない。

(参考記事:「物乞いを収容せよ」金正恩命令に国民から疑問の声

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今回の命令に現地の住民は激怒している。

少しでも生活の足しにすべく、土地を切り開いて畑を作り、栽培方法を学んでビニールハウスを設置するなど投資を行い、2〜3年の試行錯誤の末にようやく収穫できるようになったところだ。わざわざそこを狙ってこんな命令を出した道党に対する怒りは激しい。

「糊口をしのぐのも難しい状況で、わずかばかりの畑で(栽培を始めて)、まだ投資の回収もできていないのに、まずは国に差し出せとは、こんな詭弁がまかり通っていいのか」
「自分の土地に自分が植えて自分が食べるというのに、それさえも所有を許さず、党がそんな指示を下すとは、強盗と変わりない」
「学院への供給が必要ならば、道党がカネを払って買ってくれればいいのに、無条件で差し出せとは、一体どういうことだ」
(住民の声)

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道党はすぐにでもトラックを派遣してスイカを持ち去ろうとしているが、住民は早めに収穫して市場に売り払ったり、隠したりするなどの手段で抵抗するつもりだという。

(参考記事:「革命の聖地」で不満を爆発させる北朝鮮の女性たち

食べ物を巡る争いは今に始まったことではない。例えば、軍は食糧を協同農場からの供給に頼っているが、食糧を引き渡そうとしない協同農場との間でトラブルとなる。要求どおりに引き渡せば、手元に何も残らないからだ。

(参考記事:兵士が農民に銃を向けて…北朝鮮「食糧争奪」で分裂の危機