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脱北して韓国で暮らしていた男性が、密かに北朝鮮に戻っていた事件。当局はこの男性が「悪性ウイルス」、つまり新型コロナウイルスの感染が疑われる患者であるとして、開城市を完全封鎖する措置を取り、全国が蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。

事件を受けて朝鮮労働党中央委員会政治局は非常拡大会議を緊急招集したが、国家非常防疫システムを最大非常体制に移行する決定書を採択すると共に、警備体制についての調査と責任者への厳しい処罰を行うことについても討議されたと、国営朝鮮中央通信が伝えた。

(参考記事:「コロナ感染」の脱北者男性、北朝鮮で当局に自首か

北朝鮮と韓国が接する軍事境界線の反対側、北朝鮮と中国との国境でも、脱北者が密かに再入国する事件が発生したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民によると、この脱北者は道内の清津(チョンジン)出身で、7月中旬に穏城(オンソン)と中国・吉林省の間を流れる豆満江を渡って自宅に戻り、10日あまり経ってから咸鏡北道保衛局(秘密警察)に自首したという。既に取り調べは終了し、現在は新型コロナウイルスに感染した疑いがあるとして隔離されている。

当局はこの男性がずっと中国にいたのか、韓国に滞在したことがあるのかについて、市民に悪影響を与えかねないとして明らかにしていない。また、なぜ帰宅し、10日後に自首したのかなど、動機も不明だ。

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さらに問題となったのは、この脱北者が川を渡るときに何の制止も受けなかったという点だ。

今回の事件は、金正恩党委員長に報告された。そして先月末、国境警備隊27旅団271連隊1大隊所属の1個中隊が、脱北者の違法越境を発見できなかったとして、解散させられた。これだけでも非常に強い措置だが、中隊の幹部にも厳罰が下された。

咸鏡北道の別の住民によると、中隊長をはじめとした中隊の指揮官らには、戦闘警備勤務怠慢罪で10年以上の教化刑、つまり懲役刑が下された。

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事情を全く知らない家族までもが、突如として車に乗せられ教化所(刑務所)送りになるという過酷なものだ。ただ、管理所(政治犯収容所)とは異なるため、家族全員が10年間も刑務所暮らしを強いられるわけではないようだ。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

元々、国境警備隊は軍の中でも非常に人気の高い配属先だった。密輸や脱北に加担し、その見返りとして受け取ったワイロで比較的豊かな暮らしができ、除隊後の生活資金も稼げたからだ。ところが、新型コロナウイルスの国内流入防止策として国境警備が強化され、密輸が難しくなってしまった。

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隊員らはすっかりやる気をなくしてしまい、警備にも身が入らなかったようだと、情報筋は語っている。

(参考記事:金正恩「拷問部隊」幹部らが口封じで消された重大事件