「船底が突然消失」北朝鮮で重大事故…ダム湖に消えた人々

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日本の鉄道史における最悪の事故は、1944年12月に起きた沖縄県営鉄道輸送弾薬爆発事故だ。列車に積まれた武器、弾薬、ガソリンが蒸気機関車の火花に引火し、乗っていた兵士、学生など220人以上が死亡する大惨事となった。可燃性物質を無蓋貨車に載せてはならないという規則違反が招いた事故だった。

このような大事故は、戦時中から戦後の混乱期に集中して起きているが、北朝鮮では平時にも頻発している。例えば、1979年には咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)で貨物列車が爆発、通勤列車が巻き込まれ3000人が死亡したと伝えられている。また、1989年には同じ咸鏡南道で列車が谷底に転落し、数百人から1000人の死者を出している。

事故頻発の背景には、施設の老朽化、安全装置の不備など様々あるが、一向に改善される気配がない。

(参考記事:通勤列車が吹き飛び3000人死亡…北朝鮮「大規模爆発」事故の地獄絵図

両江道のデイリーNK内部情報筋によると、今月10日午後、恵山(ヘサン)から甲山(カプサン)に向かっていたボートが沈没する事故が起きた。家頭女性(職場に属していない女性)11人、中年男性3人、9歳の子どもの合わせて15人が乗っていたが、全員が行方不明となった。

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いずれも買い物や商売のために恵山に行った帰りだった。家族と地域社会が行方不明者の捜索に乗り出したが、15日経っても見つからないことから、遺体が遠くに流れされてしまった可能性がある。

事故を起こした船は老朽化が著しく、運航中に突如として船底が抜けてしまったとのことだ。また、救命胴衣などの安全装置も装備されていなかったようだ。10人も乗れば満員になる船に15人も乗っていた上に、商品類も多く積まれていた模様だ。

船が運航していたのは、2007年に完成した三水(サムス)発電所のダム湖だ。甲山から恵山までは直線距離で30キロ程度だが、ダム湖に遮られ遠回りしなければならず、70キロほどの道のりになる。運賃が安く移動時間が短いため、多くの人が船を利用している。

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この三水発電所も、いわくつきの施設だ。この発電所の建設は、1970年の朝鮮労働党第5回大会で建設が提案されたが、地質に問題があるとして立ち消えになっていた。それを、朝鮮労働党の宣伝扇動部が権力闘争の道具として建設を強行させたのだ。

(参考記事:ダムを使って再起を図るも政治犯収容所行きとなった鄭夏鉄と崔春晃

発電所は完成したものの、設計ミスで当初の予定の4分の1以下の1万2000キロワットしか発電できず、完成から3年はまともに稼働ができなかった。ダム壁はコンクリートではなく、砂利と小石を積み上げただけのもので、発電機をフル稼働させると、ダム壁が崩壊しかねないという構造上の問題と手抜き工事によるものだったが、当局は「破壊分子のせいだ」と言い訳をしている。

とうとう2014年5月には、ダム壁から漏水し稼働が止まってしまった。その後、稼働を再開したようだが、また2019年に同じ理由でダム壁の隙間から水が漏れて発電できなくなっているもようだ。

(参考記事:北朝鮮の水力発電所が漏水で稼動停止、崩壊の危機に