国境警備隊だったチェ・チョルミン(2010年3月に脱北 29歳)さんは、「軍時代に一番力になるのは故郷の両親が送ってくれた手紙だが、列車の都合で手紙を受け取るのが大変だ。年に数回しか受け取ることが出来ないのに、これも20日以上を要する」と説明した。
「受け取った手紙はポケットにしまって擦り切れるまで読む。こうやって10年の歳月を耐えぬく」と話した。
軍が中心となっている北朝鮮社会では、軍事機密の漏洩に敏感である。この為、手紙は徹底的に点検される。護衛司令部は各旅団の保衛部で、人民武力部は各部隊の機務課で手紙を検閲している。軍部隊の位置などが書かれている場合には、思想批判を受ける。
砲兵だったキム・ミンホ(2009年に脱北 30歳)さんは「『両親に数日後に整備が終わると違う部隊に移動します。今後は新しい部隊に返信を願います。住所は下の通りです』と移動先の住所を書いた手紙を送ったことがある。半月後に保衛部に呼び出されたが、保衛部の部長の机の上には私の手紙があった。思想批判を受け、誓約書まで書いてようやく許された」と回想した。