北朝鮮兵士を庶民が袋叩きに…国家の存立ゆるがす軍の迷走

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巨大な兵力を抱える北朝鮮の朝鮮人民軍は、周辺国に圧迫感を与えるイメージとは異なり、その内実はかなり杜撰だ。

食糧や生活必需品の補給を、もはやまともに機能していない計画経済システムに頼っているため、末端の兵士たちは常に腹をすかせている。家族からの差し入れが得られない者は、栄養失調にかかるほどだ。

僻地の部隊では軍官(将校)までもが耐乏生活を余儀なくされる。

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そんな中でも例外と言えたのが、国境警備隊だ。中国との国境に接する地域では、住民の多くが密輸で生計を立てているが、それを見逃す見返りにワイロを受け取っていたり、あるいは部隊そのものが密輸に関与したりしているため、比較的余裕があった。

しかし、昨今の新型コロナウイルスが状況を一変させた。国境が封鎖され、密輸に対しても厳しい取り締まりが行われるようになったのだ。デイリーNKの平安北道(ピョンアンブクト)の軍の情報筋によると、国家保衛省(秘密警察)は今年2月、「企てられているすべての密輸、密売、輸出入行為を軍法で裁け」「これは最高司令官(金正恩氏)の命令だから、いい加減に扱ってはならない」という指示を、各国境警備隊に下したと伝えた。

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兵士らが見出した活路は、民間人相手の窃盗だ。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、「軍部隊が盗賊になったと言えるほど、兵士による泥棒が深刻な状態」だと伝えた。

中国との国境に接する義州(ウィジュ)や龍川(リョンチョン)の民家に空き巣に入る兵士が急増し、情報筋によると国境封鎖前の10倍以上に達している。主なターゲットは食べ物だが、ついでにとばかりに電化製品や現金も持ち去る。

民間人も黙ってやられているわけではない。下戦士(二等兵)と思しき兵士が民家に空き巣に入ったところ、その家の住人に見つかった。住人は近隣住民を呼び集め、この兵士を袋叩きにしたというのだ。

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「1〜2回なら、食べ物を掴ませて返してやってもいいが、被害に遭う家が続出しているので、兵士らに対する感情がよくない」(情報筋)

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現地では、遅くとも6月中には、密輸禁止措置が緩和されるのではないかと噂が流れている。「密輸禁止を緩和」というのも奇妙なことだが、違法行為を前提とした商取引が、地域経済の一部に組み込まれてしまっているのだ。

金正恩氏は度々、窃盗に及んだ兵士を厳罰に処する方針を示しているが、根絶は難しい。綱紀粛正を徹底すれば、誰も彼も共倒れになってしまい、ひいては国の存立をも危うくしかねないからだ。

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