報告書には、脱北者が北朝鮮内で目撃し、体験した人権侵害の事例を生々しい証言で綴られている。その証言には、近代社会の常識では想像しがたい人権弾圧の実態が如実に現れている。
南新義州の人民保安省安全部拘留場に収監されたイ・ミスク氏の証言は衝撃的だ。拘置所のそばにある軍人病院で、中国への脱北に失敗して逮捕された妊婦が産んだ赤ん坊を、看護師が濡れたタオルで絞め殺したという。
看護師は「赤ん坊は中国人の赤ん坊だ。そんなのを誰が望むのか」「脱北は父なる国家に対する重罪だ。犯罪者の産んだ子どもに哀れみをかけることなどない」と言い放ったという。
この妊婦は看護など適切な処置が何もなされないまま日常的な仕事を矯正されたという。また、政治犯収容所に入れられていた別の女性は、精神的、肉体的苦痛で3年間生理が止まったと証言している。