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北朝鮮の大学は、学部卒業時に「候補学士論文」、大学院の修士課程に当たる博士院の卒業時に「学士論文」を提出する。博士院への進学は、本人が希望しただけで叶えられるものではなく、成績が優秀な者の中から選ばれた人だけができる。

北朝鮮の最高学府、金日成総合大学の修士論文の審査過程で不正行為が発覚し、大々的な検閲(監査)に乗り出す事態となっていると、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

博士院で論文を提出するには、3年の研究生活の後、博士院で6科目の学位論文提出資格試験を受け、合格すれば試験の点数、業績、経歴、普段の生活を考慮して許可が出てようやく論文審査に臨む。

審査は、大学から独立した国の機関である国家学位学職審査委員会が論文弁論(口頭での説明)と、朝鮮語と第1外国語での質疑応答が行われるが、その過程は熾烈なもので、数ヶ月前から食事も喉を通らないほど極度の緊張を強いられるという。

金日成総合大学自然科学部門学部の卒業生Aは、指導教授Bから論文を書くことを勧められた。論文を書き上げ、先月20日に審査に臨んだ。論文弁論には彼の指導教授Bともうひとりの指導教授Cの2人も参加したが、これが問題となった。

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第2指導教授のCは、Aの論文のテーマとは全く無関係の分野の専攻なのに、なぜか指導教授となったが、委員会での朝鮮語、英語での質問にまともに答えられなかった。委員会の委員は「おかしい」と感じて、金日成総合大学の朝鮮労働党委員会に問題を提起した。

党委員会の調査の結果、次のようなことが判明した。

第2指導教授Cは、第1指導教授Bの教え子だった。Cは現在副教授で、教授になるためには数件の論文指導をすることが求められるが、Bが教え子であるCを教授にするために、無理やりその教え子のAの指導教授にしたというものだった。つまり、教え子に便宜を図るため、孫弟子の論文審査を利用したという構図だ。

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この事態を受けて、大学の党委員会は、チョン・マノ副総長が司る検閲調査委員会を立ち上げた。党委員会のイルクン(幹部)、大学の指導教授課、国家学位学職委員会のメンバーなど7人からなるこの委員会は、今まで第2指導教授Cが指導を行った学生の論文を全て再検討するだけにとどまらず、大学全般においてコネを使った学位の授与など不正行為についての調査を行うことになった。調査は4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)までに終えて、中央党(朝鮮労働党中央委員会)に報告されることになっている。

大学の党委員会は、金日成氏の名前が付けられた最高学府で決して起きてはならない極めて深刻で、「党の唯一領導体系確立の10大原則」に違反する重大な行為とみなしている。

10大原則の第9条の9つの項目の7番目には次のような条項がある。

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偉大なる首領金日成同志に対する忠実性を基本尺度とし、幹部を評価し、選抜、配置しなければならず、親戚、親友、同郷、同窓、師弟関係などの情実、顔面(面識)関係により、幹部問題を処理したり個別の幹部を勝手に登用したりする行為については、黙過してはならず、強く闘争し、幹部事業で制定された秩序と党的規律を徹底的に守らなければならない。

情実、面識関係、つまり血縁や地縁などに基づくコネで幹部を登用してはならないということだ。しかし、この条項は北朝鮮の大学の現実とは大きく異る。

そもそも大学の入学に当たっては、審査を行う教授や関係者に多額のワイロを支払うことが求められる。

(参考記事:入学から卒業まで「ワイロまみれ」の北朝鮮の大学

入試問題も密かに売買されている。晴れて合格したとしても、さらなるワイロの支払いが求められ続けるなど、カネとコネなしでは何一つできない。おそらくC副教授も、教授になるために、B教授にワイロを渡したのだろう。

(参考記事:試験問題がおおっぴらに取引される北朝鮮の「汚受験」

今後予想される処罰について情報筋は、批判や党の責罰(警告または厳重警告)を受けると思われるが、同様の事例が複数発覚した場合には、学位と教授のポストの取り消し、つまり大卒の資格すら剥奪するほどの厳しい処罰が避けられないと見ている。そうなれば、教授専用の住宅も没収され、地方の寒村に追放される可能性もある。