北朝鮮の金日成主席は晩年、メガプロジェクト大好き人間だった。その代表例が西海閘門と、第13回世界青年学生祝典の参加者を受け入れるためのホテルなどの施設だ。巨額の予算を投じハコモノを建て続けたことが、彼の死後に大飢饉「苦難の行軍」を引き起こす遠因となった。

そのメガプロジェクト好きは、孫の金正恩党委員長にも受け継がれた。国際社会の制裁など何のその、平壌市内に次々とタワーマンション団地を建設、革命の聖地の三池淵(サムジヨン)、元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区、陽徳(ヤンドク)温泉文化休養地などなど、槌音を全国に響かせ続けている。

(参考記事:金正恩印「温泉リゾート」が新型コロナで壊滅的打撃

メガプロジェクトに人々を動員することは内部結束に繋がり、結果物は最高指導者の業績となるため、単なる個人の趣味を超えて、体制の維持装置と化しているが、そのしわ寄せは一般の建設現場に行っている。鉄筋、コンクリート、レンガなどの資材が不足しているのだ。その代わりに当局が推奨しているのは「土レンガ」なるものだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK情報筋によると、この土レンガとは、土に硬化剤を混ぜて作ったもので、似たようなものは北朝鮮だけではなく、世界的に広く使われている。

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは昨年8月、平安北道(ピョンアンブクト)龍川(リョンチョン)郡の楊西(ヤンソ)農場で、土レンガを使って住宅を建設する事例を紹介した。2階建ての住宅の建設にあたって柱だけをセメントにして、残りを土レンガを使うことでセメントの使用量を6割、コストを7割節減できたとしている。

コスト節減のみならず、これを使って建てた住宅は保温、保湿、通気性に優れていて、冬は暖かく、夏は涼しいというメリットがある。

ただしそれは、まともに作った場合の話だ。

土レンガは土と硬化剤を6対4の割合で混ぜた上で水で練り上げ、真ん中に穴を開けたブロックの形に整形して、7〜8日間日干しする。しかし、本来なら必要な900度から1100度で焼き固める過程を省略している上に、硬化剤を規定通りに入れないことが懸念されている。そうなれば、耐久性に問題が生じるのは火を見るより明らかだ。

今まで大きな問題にならなかったのは、主に平屋建てに使われてきたからだ。情報筋はは「平屋を建てるときにはセメントのレンガを一定の間隔で積んで、残りは土レンガを使うので、セメントの節約にも利点として挙げられる」と語った。

しかし、外部からの衝撃に弱く、2階以上の建物に適していないと言われている。現地でも、台風や洪水の被害が頻繁に起こる北朝鮮で、土レンガで作った2階建ての建物は向いていないとの指摘がなされている。土レンガばかり使うのではなく、例えば耐久性が求められる農場の倉庫は、従来どおりセメントで建てられているという。

これは決して杞憂ではない。北朝鮮では各地で建物が崩壊する事故が起きているが、資材の横流しによる手抜き工事のその一因だ。

(参考記事:マンション崩壊で多数が下敷き…金正恩氏の「指示」もムダ

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