北朝鮮有数の埋蔵量を誇る鉄鉱山の茂山(ムサン)鉱山。かつては、中国企業と合弁で大量の鉄鉱石を中国に輸出し、莫大な外貨を稼ぎ出していた。

ところが、その様子が変わったのは2017年のことだ。

ミサイル発射と核実験を繰り返す北朝鮮に対して国連安全保障理事会は2017年8月、制裁決議2371号を全会一致で採択。加盟国に対して北朝鮮との鉱物資源の取引を禁じたことで、茂山からも輸出ができなくなり、町は不況に襲われた。

(参考記事:国連安保理、北朝鮮制裁を全会一致で採択…石炭・海産物を全面禁輸

その後も細々と操業を続け、鉄鉱石を中国に密輸することで糊口をしのいでいた。しかし、昨今の国境統制、密輸取り締まりの強化に加え、新型コロナウイルスで国境が封鎖されたことで、それすらできなくなったと咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

今年に入ってから稼働率が5割を切り、5つある鉱区のうち2つしか稼働していないと伝えた情報筋は、その理由に1月末からの国境封鎖を挙げた。

国営の朝鮮中央通信は今年1月、茂山鉱山の鉄山峰(チョルサンボン)で40万トン大発破を行ったと報じた。生産拡大のためだが、資材や輸送車両の不足で計画通りには行っていない。

「鉄山峰発破は大々的に行ったが、設備が老朽化しており、不純物を除去する精鉱がまともに行われていない。トラックも充分に支援されず運送にも困難をきたしている。今の(北)朝鮮は、鉄鉱石が多くても生産を正常にできない」(情報筋)

稼働率の低下で、労働者は賃金をまともに受け取れない状況だ。情報筋によると、現在の賃金は幹部は1万2000北朝鮮ウォン(約140円)、一般労働者は3500北朝鮮ウォン(約40円)だ。これでは生活できないため、手元にある生活必需品を市場で売って生活費を賄っている。

中国の輸出が増えた2013年には月給が30万北朝鮮ウォン(約3900円)、最高では100万北朝鮮ウォン(約1万4000円)に達していたというから、現在の落ちぶれ方がよくわかる。

(参考記事:北朝鮮の鉱山労働者、無断欠勤で刑務所送りに

こんな状況下でも、労働者は毎日の出勤を強いられている。2万人を超える労働者を管理し、企業所の運営を維持するためだという。

朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会の後で当局は、「良質な鉄鉱石を増産し、金策(キムチェク)製鉄所に送れ」「金策製鉄所と城津(ソンジン)製鋼所に精鉱120%を超過で送れ」などと指示を下したが、労働者は「鉱山はほぼ廃墟だ」「昨年より精鉱を増産するなど不可能だ」などと冷笑しているという。

豊富な財源で労働者を高待遇していた茂山鉱山だが、輸出がストップしたことで操業が停まり、生きて行けなくなった労働者は相次いで山を去ったと伝えられている。

(参考記事:北朝鮮有数の鉱山が操業中断、路頭に迷う子供たち

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