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感染拡大の中心が中国から日本や韓国など他の国に移りつつある新型コロナウイルス。ネット上には、検査を受けたくても受けさせてもらえないことを訴える声が見られるが、検査はおろか、一切の手当てを受けられない人々もいる。中国で息を潜めて暮らす脱北者だちだ。

デイリーNKの中国の情報筋は、在中脱北者が置かれた状況を伝えている。

情報筋が例に挙げたのは、脱北者の多い中国東北から遠く離れた浙江省に住む20代の脱北女性の事例だ。中国人の夫ともにも暮らしているが、発熱と喉の痛みを覚え、病院を訪れた。しかし、診察すら受けられずに帰宅せざるを得なかった。

病院で「新型コロナウイルスの検査を受けるには公民証(身分証明書)の提示が必要で、身元の確認なしではいかなる診察、治療もできない」と言われたため、夫の公民証を提示したが、本人のものではないとの理由で門前払いにされたという。

脱北女性が病院にかかる際には、夫や友人の公民証を借りることが多く、病院側もさほど問題視していなかったが、新型コロナウイルスの拡大後は、徹底した身分確認を行うようになったため、治療が受けられなくなったというのだ。

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浙江省最大都市の杭州市の衛生健康委員会のウェブサイトには、症状のある人に対して「マスクを付けた上で指定の病院を訪れ、14日以内の旅行や家畜、野生動物への接触の有無を告げる」ように訴えているが、公民証や外国人永久居留証など身分証明書に関する記述はない。ただ、中国では宿泊、交通機関を使っての移動、公の手続きなどをするにあたって身分証明書が必須であるため、わざわざ明記していないものと思われる。

脱北女性は、非合法状態で中国で居住しているため、自分の身分を示す公的な書類は持っていない。中国当局は一部地域で、脱北女性の登録作業を行っている。ただ、登録しても公民証が発行されるわけではないようだ。

(参考記事:脱北女性の「強制結婚・人身売買」で中国に態度変化の兆し

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防疫管理所の職員は女性の住む村の入口を封鎖し、出入りする人への徹底的な確認を行い、家を消毒し女性を自宅で隔離したが、それでも女性に対する治療は行わない。女性には、解熱剤を飲んで回復を待つことしかできない。

夫の親戚が持参した「コロナウイルスに効く」という触れ込みの薬を飲んでいるが、高熱が続いており、命が危ぶまれる状況だという。

同じ脱北者でも中国東北にいる人々の中には、山に身を潜めている人もいる。防疫作業の際に、身分証の提示を求められることで、脱北者であることが発覚し、強制送還されかねないからだ。

(参考記事:新型ウイルス防疫作業を恐れ山へ逃げる脱北者

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浙江省政府の発表によると、25日の時点で省内の新型コロナウイルス感染者は1205人、死者は1人で、814人は既に退院している。一方の北朝鮮は、国内に感染者はいないと国営メディアを通じて喧伝しているが、各地から感染を疑わせる事例が報告されている。

(参考記事:北朝鮮の工作機関員らが苦痛訴え…「新型ウイルス」警戒下で緊張走る