新型コロナウイルスによる肺炎患者が続出している中国湖北省の武漢。そこから1〜2000キロ離れた東北地方でも感染拡大が始まっている。

各地方政府の集計によると、27日24時(28日午前0時)の時点で黒龍江省では21件、吉林省では4件、遼寧省では27件、(瀋陽7件、大連5件、丹東4件)の感染が確認されている。

これら3省の政府は25日、「突発的な公衆衛生事件に対する第一級(最高レベル)の応急対応メカニズム」(突発公共衛生事件一級響応機制)を発動した。これは、法律で定められた4つのレベルのうち、最も深刻なものだ。

隣接する北朝鮮は気が気でないだろう。とりわけ、中朝貿易の拠点である遼寧省の丹東でも4件が確認されたこともあり、感染拡大はもはや目の前に迫っていると言っても過言ではない。

気が気でないのは、脱北して中国に逃げ込んだ脱北者たちも同じだ。冬になると、国境の川が凍るため、脱北者が増える傾向にあるが、彼らは中国当局による防疫作業を恐れている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

脱北して英国に住むキム・ジュイルさんは、かつてSARSやMERS(中東呼吸器症候群)の感染が拡大したときに、中国当局が農村でも防疫作業を実施したことを指摘。公安によるものではなくとも、身分証の確認を求められることから、逮捕されることを恐れて山に逃げたと当時の状況を語った。

中国は、脱北者を経済的理由による不法入国者とみなしており、摘発すれば原則として北朝鮮に強制送還してしまう。状況によっては命すら危ぶまれる状況となりうる。

(参考記事:金正恩氏に追い詰められ死を選んだ、ある一家の悲劇

中国に残って取り締まりを避けられたとしても、脱北者の置かれた状況は不安定極まりない。北朝鮮領事館の保護を受けられるわけではなく、万が一新型ウイルスに感染したとしても、まともな治療も望めなければ、帰国も難しいだろう。

(参考記事:「わが国に入ってきたら終わり」北朝鮮国民、新型肺炎に震撼

さらに、移動統制が強化され他地域への移動も容易ではない。

丹東の事情に明るい情報筋によると、検問が強化されているため、個人の車両、つまり白タクで移動する際の運賃が平時より高くなっているという。ちなみに中国では、鉄道や長距離バスを利用するには、きっぷ購入時、改札時の2回、身分証の提示が求められるため、脱北者の利用が困難だ。

中国当局は、中国人男性と結婚した脱北女性に対して登録を呼びかけるなど、脱北者の処遇を変化させている。とはいえ、当局の胸先三寸次第で決まる状況であることには何ら変わりない。

(参考記事:脱北女性の「強制結婚・人身売買」で中国に態度変化の兆し

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