恐ろしくなったこの女性は、手元にあった現金に加え、付き合いのある業者から借りて500万北朝鮮ウォンを準備した上で、「検事の使い」と自称する男性と対面した。
自らを「平安北道検察所の職員」と名乗ったこの男性は、表情ひとつ変えることなく検察のハンコが押された文書を見せた。女性は本物だと思い込み、現金を渡した上で「何卒穏便に」と頼み込んだという。
しばらく経ってからどうも怪しいと思い、地域担当の保安員(警察官)に知らせたが、もし詐欺だったとしても取り返す術はないと告げられてしまった。生き馬の目を抜く北朝鮮の市場経済の最前線で長年商売をしてきた女性だが、このような詐欺が横行していることを知らず、被害に遭ってしまった。
保安署、保衛部(秘密警察)などが、違法行為をネタに多額のワイロを要求する行為は当たり前のように行われてきた。払わなければ暴行、暴言、拷問など酷い目に遭わされる。
(参考記事:口に砂利を詰め顔面を串刺し…金正恩「拷問部隊」の恐喝ビジネス)政府機関の関係者を名乗って現金を騙し取ろうとする手口は北朝鮮でも韓国でも同じだが、韓国の場合は「相手を安心させる」のば目的でる一方、北朝鮮では「相手を恐怖で震え上がらせる」ことを目的としている点で大違いだ。