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先月、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に新たな命令が下された。「戦争を始めろ」というものでもなければ「ミサイルを撃て」というものでもない。「豆を植えよ」というものだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、道内の軍部隊にこのような命令と共に、品種改良された豆の種が支給されたと伝えた。この豆は「副業地」と呼ばれる部隊所属の土地で栽培されるが、種まきは先月5日までに終了したとのことだ。

この豆は大豆の一種と思われるが、現地では「油豆」と呼ばれ、軍部隊にのみ配給された。一般の豆と比べて、色は黄色に栗色が混じったつやのあるしましま模様だ。「この豆はそのまま食べても栄養価が高いが、油を搾ると一般の豆より2倍の油が得られる」というのが上級部隊の説明だ。

通常、畑の1つの穴に3〜4粒の種を蒔くが、この豆の場合は6粒で、背丈は低いが収穫量は増えとのことで、軍の食糧問題解決の助けになるだろうとの期待を集めている。

ただ、種の配給量は足りていない。当初は規定通り6粒植えていたが、足りなくなったため半分に減らし、ついには周囲の民家から普通の豆を供出させて植えた。

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軍は清津市近辺と穏城(オンソン)郡倉坪(チャンピョン)労働者区の協同農場に対して、豆の供出を求めた。村人は少ない人で1〜2キロ、多い人は5〜10キロの豆を集めて持ち寄った。そのおかげで種まきが計画通りに終わった。農場管理委員会は村人を「立派な軍民情緒(軍を支援しようとする心)を発揮した」と表彰し、軍は感謝の意を示し収穫後にお礼を受け取ることになった。

それにしてもなぜ、軍が豆を栽培しているのか。

北朝鮮の軍部隊は規模の差こそあれ、副業地と呼ばれる数千坪の土地を持っている。部隊で出される様々なおかず用の野菜を育てる畑だ。兵士たちは訓練と称して農作業に駆り出されることも少なくないという。

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元々、軍部隊に配給される食糧は、各地の協同農場で生産されたものが当てられた。それが、1990年代後半の食糧危機「苦難の行軍」で途絶えがちになった。兵士たちは餓死を免れるため、部隊周辺の山を切り拓くなどして畑を耕した。

「すべての軍の指揮官は後方供給事業の重要性をよく知り、大いに関心をもつべきだ」

金正日総書記は2003年12月に冬季訓練中の軍部隊を視察した際に、後方供給事業、つまりおかずの重要性を強調した。「腹が減っては戦は出来ぬ」ということだろう。

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金正日氏は2011年7月、煕川(ヒチョン)2号発電所の建設現場に動員された兵士たちにプルゴギ(焼き肉)を贈った。それに感激する兵士たちの様子が絵に描かれ国営メディアで紹介されたが、北朝鮮の食糧事情がいかに劣悪かを大々的に宣伝する逆効果を生んでしまった。

(参考記事:【写真コラム】「焼き肉」を前に感動の涙を流す北朝鮮の兵士

金正恩党委員長が政権の座についても軍の食糧事情は改善せず、民家や農場を襲って食糧を強奪したり、中国に越境して強盗殺人を起こすなど、「馬賊」と呼ばれるまで至った。田舎の親から仕送りをしてもらい、飢えを凌ぐ兵士も少なくなかった。

(参考記事:北朝鮮軍兵士44人が脱走、一部が中国で強盗殺人

金正恩氏は、軍の食糧問題解決に相当の心血を注いだようで、一時期は大幅な改善が伝えられていたが、昨年の凶作や制裁により食糧不足が再び浮上し、兵士たちはまた苦しい思いをしているかもしれない。

(参考記事:「1割の世帯で飢餓」衝撃の報告に金正恩政権は右往左往